スヴァロジチ
スヴァロジツ · ラデガスト
スラヴ神話の火の神。名は「スヴァローグの子」を意味する。聖なる火と竈の火を司り、レトラの神殿で篤く祀られた。この地で崇められたラデガストは、その地方的な別名と見る説が有力である。
解説
概要
スラヴ神話の火の神。その名は「スヴァローグの子」を意味し、天の鍛冶神スヴァローグの息子とされる。竈にともる家庭の火から、天に輝く聖なる火までを司る火神であり、とりわけ聖なる火として崇められた。スラヴの神々のなかでも、中世の記録に崇拝の跡がはっきりと残る、数少ない神の一つである。
神話・物語
スヴァロジチの崇拝は、11世紀のドイツの年代記作者メルゼブルクのティートマルや、ブルーノ・フォン・クヴェルフルトによって書きとめられている。それによれば、エルベ川流域のポラーブ・スラヴ(レダリ族)は、レトラ(リエデゴスト)という聖なる城市の神殿でこの神を篤く祀り、神託を仰いだという。この地で最も崇められた神は、しばしばラデガスト(ラドゴスト)の名で呼ばれるが、今日の研究では、これはスヴァロジチの地方的な別名であって、都市の名が神名と取り違えられたものと見る説が有力である。火の神スヴァロジチは、聖なる火として畏れられ、また戦にあっては守り手として頼られた。
図像と象徴
確かな古代の神像は伝わらないが、聖なる火そのものが、この神の何よりの象徴であった。神殿にともされた消えぬ火が、神の臨在を示すとされた。近代には、レトラで崇められたラデガストの姿が想像され、チェコのラドホシチ山に立つ角をもつ厳めしい神像は、この神の現代における表現として名高い。
系譜と関係
スヴァロジチは鍛冶神スヴァローグの子で、太陽神ダジボーグとは兄弟にあたる。史料によっては、スヴァロジチとダジボーグを同じ神と見る立場もあり、両者の関係には解釈の幅がある。レトラで崇められたラデガストとの同一視とあわせて、この神をめぐっては、地域ごと・史料ごとの異伝が多い。
文化的足跡
スヴァロジチ、あるいはその別名ラデガストの記憶は、とりわけ西スラヴの地に長くとどまった。チェコやスロヴァキアの伝承には、この神にちなむ地名や物語が残り、近代以降は、ラドホシチ山の神像や、その名を冠した銘柄など、地域の文化的象徴として親しまれている。