ケルベロス
Cerberus
ギリシア神話で冥界の門を守る多頭の犬。死者を外へ出さず、生者を入れない番人。テューポーンとエキドナの子で、ヘーラクレースが十二功業の最後に素手で生け捕りにした。首は三つとされることが多いが、五十とも百ともいう。
解説
概要
ケルベロスは、ギリシア神話で冥界(ハーデースの国)の門を守る多頭の犬である。死者を外へ出さず、生者を中へ入れない番人とされる。
神話・物語
ケルベロスが物語の前面に出るのは、英雄ヘーラクレースの十二功業の最後においてである。エウリュステウス王に命じられたヘーラクレースは、冥界に降ってケルベロスを地上へ連れてくるよう求められた。アポロドーロスによれば、ハーデースは武器を用いずに取り押さえるならという条件でこれを許し、英雄は素手でこの犬を組み伏せて連れ帰った。連れてこられたケルベロスを見た王は、恐れて大甕の中に隠れたという。
ほかにも、竪琴の名手オルペウスがその音色でケルベロスを鎮めて冥界へ入った話や、ウェルギリウス『アエネーイス』で、巫女シビュラが眠り薬を混ぜた蜜の菓子を投げ与えて通り抜ける場面が名高い。
図像と象徴
頭の数は伝承によって割れる。今日ひろく知られるのは三つ首だが、ヘーシオドス『神統記』は五十の首を、ピンダロスは百の首を数えたと伝えられる。古典期の壺絵では二頭ないし三頭で表されることが多く、背に蛇を生やし、尾が蛇となった姿もある。本サイトが掲げる前525年頃のカエレ式ヒュドリア(ルーヴル美術館蔵)は、ヘーラクレースがケルベロスを引き立て、エウリュステウスが大甕に逃げ込む場面を描いた古い作例である。

系譜と関係
テューポーンと、蛇身の女エキドナの子とされる。同じ両親から生まれた兄弟に、二つ首の犬オルトロス、ヒュドラー、キマイラなどがある。仕える相手は冥界の王ハーデースである。
文化的足跡
ダンテ『神曲』地獄篇では、ケルベロスは第三の圏で貪食の罪を犯した亡者を苛む姿で現れる。

領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。