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オーディン
PLATE — ÓÐINN
NORÐR · 北欧神話
ÓÐINN

オーディン

オージン · ヴォータン · ウォーデン

Ólafur Brynjúlfsson PUBLIC DOMAIN

北欧神話の主神。詩と知恵、戦と死、そして魔術を司る。片目を代償に知を求め続けた探求者であり、戦死者をヴァルハラに集めながら、ラグナロクでは狼フェンリルに呑まれる終焉を負う神である。

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解説

概要

オーディン(Óðinn / Odin)は北欧神話の主神で、アース神族の長である。詩と知恵、戦と死、そして魔術を領分とする。雷神トールが膂力で世界を守るのに対し、この神は知識と言葉と策略によって支配する。軍神であると同時に知恵の神でもあるという二面が、この神の中心にある。

名はゲルマン祖語 *Wōðanaz に遡り、古英語のウォーデン、古高ドイツ語のウォータンと同源である。語根 *wōð- は激情・霊感・狂乱を表し、詩の霊感と戦場の狂乱という二つの領分がすでに名に含まれている。名を記した最古の例は、2020年にデンマークのヴィンデレウで出土した5世紀のブラクテアート(金の打出し円盤)で、その銘は「彼はオーディンの者」と読まれている。

金の円盤の拡大写真。縁にルーン文字が並び、長髪の人物の頭部と馬が打ち出されている
ヴィンデレウ埋蔵宝の金のブラクテアートX13の銘文部分(5世紀、デンマーク)Vejlemuseerne / Konserveringscenter Vejle / CC BY-SA 4.0 — Wikimedia Commons

神話・物語

この神の物語の多くは、知を代償と引き換えに得る話である。『ハーヴァマール』138〜139節でオーディンは、風の吹きさらす樹に九夜吊られ、槍に傷つき、自らを自らへの犠牲として、ルーンを拾い上げたと語る。この樹を世界樹ユグドラシルと見るのが一般的な解釈で、ユグドラシルの名を「ユッグ(オーディンの異名)の馬」、すなわち絞首台と解する説もこれに結びつく。ミーミルの泉の水を飲むために片目を質に置いたこと(『巫女の予言』、『ギュルヴィたぶらかし』第15章)、巨人スットゥングの山から詩の蜜酒を奪ったこと(『詩語法』)も同じ型に属する。『ヴァフスルーズニルの言葉』では巨人と首を賭けて知恵を競い、『グリームニルの言葉』では捕らえられて火にあぶられながら世界の成り立ちを語る。

女の術とされたセイズもこの神は行った。『ロキの口論』24節でロキは、サムセイ島でオーディンが呪術を行ったことを男らしからぬ振る舞いとして嘲っている。

戦においては、ワルキューレを戦場へ送って死ぬべき者を選ばせ、戦死者の半分をヴァルハラに迎える(残る半分はフレイヤのもとへ行く。『グリームニルの言葉』14節)。迎えられたエインヘリャルは、世界の終わりラグナロクに備えて日々戦う。その日、オーディンは狼フェンリルに呑まれ、子ヴィーザルが仇を討つ。

世界の創造について、スノッリの『ギュルヴィたぶらかし』は、オーディンが兄弟ヴィリとヴェーとともに原初の巨人ユミルを殺してその体から世界を造り、海辺の二本の木から最初の人間を造ったとする。『巫女の予言』では、人間に命を与える三柱はオーディン・ヘーニル・ロズルである。一方、スノッリが同じ13世紀に著した『ヘイムスクリングラ』冒頭の『ユングリング家のサガ』は、オーディンをアジアから北方へ移り住んだ人間の王とし、死後に神として祀られたと説明する。キリスト教徒の書き手が異教の神を扱うときの枠組み(エウヘメリズム)である。

図像と象徴

持物は槍グングニルと腕輪ドラウプニル、乗る馬は八本脚のスレイプニルで、肩には二羽の鴉フギンとムニン、足もとには狼ゲリとフレキが従う。世界を見渡す高座フリズスキャールヴに坐す。隻眼、鍔広の帽子か頭巾、外套、長い髭の老人という姿は、『グリームニルの言葉』や英雄伝説に現れる変装の姿から来ている。『ヴォルスンガ・サガ』で館の樹に剣を突き立てるのも、片目の見知らぬ老人である。

文献より古い図像も多い。ヴェンデル期(6〜8世紀)の兜飾りや5〜6世紀のブラクテアートには、鳥を伴う騎馬の人物が描かれ、オーディンと解されている。ゴットランド島アルドレの絵画石に刻まれた八本脚の馬の乗り手も、オーディンとスレイプニルと見るのが通説である。マン島のソルワルドの十字架(10世紀)には、槍を持ち肩に鳥を載せた人物が狼に足を噛まれる姿があり、ラグナロクのオーディンと解される。

黒っぽい石板の断片。浮き彫りの人物の肩に鳥がとまり、足もとに獣が描かれている
ソルワルドの十字架(10世紀、マン島アンドレアス教会)。肩に鳥を載せ狼に足を噛まれる人物は、ラグナロクのオーディンと解されるOtter / CC BY-SA 4.0 — Wikimedia Commons

本項の図版は、18世紀アイスランドの写本 NKS 1867 4to(1760年、オーラヴル・ブリニョウルヴソン画)に描かれた、スレイプニルに乗るオーディンである。近代には、ゲオルグ・フォン・ローセン《旅人オーディン》(1886年)が、鍔広帽を目深にかぶった放浪者の姿を広めた。

系譜と関係

父はボル、母は女巨人ベストラである。ボルは原初の神ブーリの子、ベストラは巨人ボルソルンの娘で、オーディンは神々の系統と巨人の系統の両方を引く。兄弟はヴィリとヴェー。妻はフリッグで、二人の子がバルドルである。トールは大地ヨルズとの子、ヴィーザルは女巨人グリーズとの子、ヴァーリはリンドとの子とされる。ヘイムダル、ブラギ、ヘズ、ヘルモーズもオーディンの子として扱われる。テュールについては、オーディンの子とする『詩語法』と、巨人ヒュミルの子とする『ヒュミルの歌』が並立する。

ローマ人はこの神を自らの神に置き換えて理解した(インテルプレタティオ・ロマーナ)。タキトゥス『ゲルマーニア』第9章が、ゲルマン人が最も崇める神をメルクリウスと呼ぶのがそれで、ウォーダンを指すと解するのが通説である。逆方向には、ラテン語の曜日名「メルクリウスの日」(dies Mercurii)がゲルマン語へ移されるとき「ウォーダンの日」と訳され(インテルプレタティオ・ゲルマーニカ)、英語 Wednesday となった。

大陸とイングランドにも伝承が残る。10世紀の写本に残る『メルゼブルクの呪文』第二呪文では、ウォーダンが馬の脚の捻挫を呪文で癒す。7世紀の『ランゴバルド族の起源』では、ゴダン(ウォーダン)が妻フレアの計略に乗せられてヴィンニリ族に勝利を与え、その名をランゴバルディ(長い髭)とした。アングロサクソンの王家の系譜は、多くがウォーデンを祖に置く。

文化的足跡

デンマークの都市オーデンセの名は「オーディンの聖所」に由来するとされる。スカルド詩では、詩そのものを「オーディンの蜜酒」「オーディンの獲物」と呼ぶケニングが用いられ、この神と言葉の結びつきを示す。キリスト教化の後も、嵐の夜に死者の群れを率いて空を駆ける「荒ぶる狩り」の首領として、ドイツやスカンディナヴィアの民間伝承に名をとどめた。

近代では、ワーグナーの楽劇《ニーベルングの指環》のヴォータンが知られ、トールキンは『指輪物語』のガンダルフを「オーディン的な放浪者」と書簡で呼んでいる。現代でも『Fate/Grand Order』『女神転生』シリーズなどの作品に登場する。

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領分・別名

INTERPRETATIO — 同一視・同源
メルクリウス ローマ神話 同一視
interpretatio germanica。タキトゥス『ゲルマニア』9 はゲルマン人が最も崇める神をメルクリウスと呼び、これはウォーダン(オーディン)を指すと解される。dies Mercurii(メルクリウスの日)がゲルマン語で「ウォーダンの日」と訳され、英語 Wednesday が成立した曜日名対応が典拠。ゼウス/ヘルメースではなくローマ名経由の対応として登録

親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。

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資料

Wikidata
Q43610 — 骨格データの出典
Commons
Odin — 図像カテゴリ