エルフ
アールヴ · アルヴ · アールヴァル
ゲルマン語圏の伝承に現れる超自然的存在。古ノルド語ではアールヴ。神々と並称される一方、古英語圏では病をもたらす者とされた。今日の姿は近代以降の造形である。
解説
概要
エルフ(elf)は、ゲルマン語圏の伝承に現れる超自然的な存在である。古ノルド語ではアールヴ(álfr, 複 álfar)、古英語では ælf、古高ドイツ語では alp、中低ドイツ語では alf という。ゲルマン祖語 ɑlβi-z ~ ɑlβɑ-z に遡る。
この語根はラテン語 albus(つや消しの白)、古アイルランド語 ailbhín、古代ギリシア語 alphós(白さ、白癬)、アルバニア語 elb(大麦)と同源で、印欧祖語 h₂elbʰ- に至る。ゲルマン語の「白鳥」を表す語 albit- も同じ系統である。したがって原義は「白い者」であったとみられる。
その「白さ」をどう読むかで解釈が分かれてきた。ヤーコプ・グリムは白さに肯定的な道徳的含意を認め、スノッリのいう「光のアールヴ」と結びつけて、この存在を光の神格とみた。しかし同源語が示すのは輝く白ではなくつや消しの白であり、中世スカンディナヴィアの文献では白さが美と結びつく。アラリック・ホールはここから、彼らが「白い人々」と呼ばれたのは、白さが——とりわけ女性の——美を意味したからではないかと論じている。アーダルベルト・クーンは1855年、インド神話の半神的工匠リブフとの同源説を唱えたが、広くは受け入れられていない。
登場する物語
古英語圏——病をもたらす者
ゲルマン語圏でこの語を伝える現存最古の写本は、アングロサクソン期のイングランドに属する。そこでのアールヴは、もっぱら医学書に現れる。人と家畜に病をもたらす存在であり、その病はおおむね内臓の鋭い痛みと精神の失調である。10世紀の『ラクヌンガ』所収の呪文「突然の刺し込みに対して」(Wið færstice)が最も有名だが、記述の多くは『バルドの医書』と『医書第三』にある。
20世紀の研究者は、彼らのもたらす病をしばしば「エルフの射撃」(elf-shot)と呼んだ。しかし1990年代以降の研究により、飛び道具で病を与えると考えられていたことを示す中世の証拠は薄いことが明らかになっている。今日この語は、中世の観念というより近代の学術用語として扱われる。
彼らに結びつく魔術は、古英語で sīden、sīdsa と呼ばれた。古ノルド語のセイズと同源であり、古アイルランドの『クー・フーリンの病臥』にも並行が見られる。近世スコットランドの魔女裁判では、目に見えぬままふつうの人々のかたわらに住む強力な存在として、彼らが繰り返し証言に現れる。
古ノルド語圏——神々と並ぶ者
長いあいだ、北欧神話のアールヴ像はスノッリ・ストゥルルソンの『散文のエッダ』によって規定されてきた。そこには「黒のアールヴ」(スヴァルトアールヴ)、「闇のアールヴ」(デックアールヴ)、「光のアールヴ」(リョースアールヴ)という三つの区分がある。しかしこれらの語は『散文のエッダ』とそれに基づく文献にしか現れない。今日では、この三分はドヴェルグ・悪魔・天使の伝統を反映したものであり、キリスト教思想の通俗綱要『エルキダリウス』から学んだ宇宙観をスノッリが「異教化」した結果だとみるのが共通了解である。
そのため現在の研究は、古ノルド語の詩、とりわけ『古エッダ』の記述に焦点を移している。古典的なエッダ詩において明示的にアールヴと呼ばれる人物は、『ヴェルンドの歌』の主人公ヴェルンド(英語ではウェイランド)ただ一人である。
より重要なのは、頭韻を踏む定型句「アース神族とアールヴ」(Æsir ok Álfar)である。詩に定着したこの対句は、アールヴがアース神族と強く結びついていたこと、あるいは両者が同一視されていたことを示す。同じ対応は古英語の「突然の刺し込みに対して」にも、ゲルマン語の人名体系にも見られ、スカルド詩ではアールヴという語が神を指す語と同じ用法で用いられる。
フレイとの結びつきも指摘されてきた。『グリームニルの言葉』は、アールヴヘイム(「アールヴの世界」)が乳歯の贈り物としてフレイに与えられたと伝える。スノッリはフレイをヴァン神族の一人とするが、ヴァンという語はエッダ詩には稀で、スカルド詩にはきわめて稀であり、他のゲルマン語には現れないとされる。ここから、アールヴとヴァンは同じ集団を指す別の語ではないかという疑いが古くから持たれてきた。ただし一致した見解ではない。
祭祀の記録もある。シグヴァト・ソルザルソンが1020年頃に詠んだ旅の詩『アウストルファラヴィースル』は、現在のスウェーデン南部エーズスコーゲンで行われたアールヴブロート(「アールヴへの供犠」)に触れる。『コルマクのサガ』にも同じ語が現れる。『エイルビュッギャのサガ』には「アールヴを追い払いに行く」(ganga álfrek)が用足しの婉曲表現として記録されており、日常の言葉のなかにこの存在が入り込んでいたことを示す。
サガにおける扱いは、ジャンルによってはっきり分かれる。超自然の描写を抑制する『アイスランド人のサガ』や司教のサガでは、名が通りすがりに出るだけである。一方、伝説的サガは彼らを英雄の祖先として、あるいは英雄とアールヴの女との性的関係として扱う。『フロールヴ・クラキのサガ』では、フロールヴの異母姉スクルドが人間の王とアールヴの女とのあいだの子とされ、セイズに長けていたと語られる。
図像と象徴
古代の図像はない。前近代の視覚資料として最も近いのは、ゴットランドのアルドレ第八画像石(8〜9世紀)とイングランドのフランクスの小箱(8世紀)に彫られたヴェルンドの鍛冶場の場面である。エッダ詩で唯一アールヴと呼ばれる人物が鍛冶であることは、ドヴェルグとの境の曖昧さとも響き合う。
本サイトが掲げるのは、マルティン・ブランデンブルクの《エルフの輪舞》(1906〜09年頃)である。月光の草地で輪になって踊る女たちを描いた、19〜20世紀ロマン主義の妖精画である。ただしこれは古ノルド語のアールヴの図像ではなく、近代の想像力が作り上げた別の存在の像であることを断っておく必要がある。今日「エルフ」の語から思い浮かぶ像の大半は、この系譜に属する。
関わる神格・伝承
「アース神族とアールヴ」という定型句によって、オーディンらアース神族と近しい位置に置かれる。住処アールヴヘイムを介してはフレイと、そしてヴァン神族と結びつく。地下のドヴェルグとは、スノッリの「黒のアールヴ」をめぐって境が重なる。
人名への使われ方は、この存在の位置を端的に示す。ゲルマン諸語において、超自然的存在を指す多くの語のうち、人名の要素として常用されたのはアールヴと異教の神々の名だけである。古英語の Ælfrēd(「アールヴの助言」)は現代英語の Alfred、Ælfwine(「アールヴの友」)はランゴバルドのアルボイン、ドイツ語圏のアルベリヒ、アイスランドのアールヴヒルドゥル。人はこの存在の名を子に与えることを望んだのである。
文化的足跡
中世以後、この語はゲルマン諸語のなかで用いられなくなっていった。ドイツ語では Zwerg(小人)に、北ゲルマン語では huldra(隠れた者)に、そしてフランス語からの借用語 fairy に取って代わられていく。信仰そのものは近世まで、とりわけスコットランドとスカンディナヴィアで持続した。
上流の文学と美術に登場するようになるのは近世以降である。文学のエルフは小さく戯れる存在として想像され、シェイクスピア『真夏の夜の夢』がその決定的な一歩となった。18世紀のドイツ・ロマン主義の作家たちはこの観念に影響され、英語の elf をドイツ語に逆輸入する。近代大衆文化のエルフは、このロマン主義的な観念から生まれた。クリスマスのエルフは19世紀末のアメリカで広まった、さらに新しい造形である。
20世紀のハイ・ファンタジーにおける、人間ほどの背丈を持つ人間的なエルフは、J・R・R・トールキンの作品を機に定着した。原典のアールヴとは相当に異なる像であり、両者を混同しないことが、この存在の千年にわたる変遷を見るための出発点になる。