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ヴァーリ
PLATE — VÁLI
NORÐR · 北欧神話
VÁLI

ヴァーリ

ヴァリ · アーリ · ボーウス

AM 738 4to, 39v(アイスランド語写本、1680年頃) PUBLIC DOMAIN

北欧神話でバルドルの復讐のためだけに生まれた神。オーディンとリンドの子で、一夜にして成人し、兄弟ヘズを討った。ラグナロクを生き延びる数少ない神の一柱である。

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解説

概要

ヴァーリ(Váli、アーリ Áli とも)は、北欧神話の神。オーディンリンドの子で、バルドルを殺したヘズに復讐するためだけに生まれ、一夜で成人してその務めを果たした。『ギュルヴィたぶらかし』はこの神を「戦において大胆で、きわめて射当てのよい者」と評する。生まれた理由と、行った一事のほかに、語られることはほとんどない。

神話・物語

『バルドルの夢』で、オーディンは死者の巫女に問い、リンドが西の館でヴァーリを産むこと、その子は生後一夜で殺しにかかること、そして手も洗わず髪も梳かずにバルドルの敵を火葬の薪へ運ぶことを告げられる。『巫女の予言』もほぼ同じ内容をより簡潔に歌う——ヘズが射た、バルドルの兄弟がただちに生まれた、オーディンの子は一夜にして殺した、と。

手を洗わず髪を梳かないという禁忌が、この神の像を決めている。復讐を遂げるまで身を整えないという誓いであり、同じ形はヴィーザルにも見られる。タキトゥスが『ゲルマーニア』第31章に記したカッティ族の習俗——敵を殺すまで髪と髭を剃らない——と並べて論じられてきた。

『ヴァフスルーズニルの言葉』第51節は、スルトの炎が鎮まったのち、ヴィーザルとヴァーリが神々の聖域に住み、トールの子モージとマグニがミョルニルを継ぐと告げる。ラグナロクを越える少数の一柱である。

ハウクスボーク本の『巫女の予言』34節は「そのときヴァーリは殺戮の縛めを縒った」と読める。ロキを縛った腸のことと解すれば、この神は復讐に加えてロキの捕縛にも関わったことになる。

サクソ・グラマティクス『デンマーク人の事績』第3巻は、これを人間の物語に置き換える。バルデルスを討ったホテルスに報いるため、オーティヌス(オーディン)はルテニアの王女リンダとのあいだにボーウス(ボー)をもうける。ボーウスはホテルスと戦って倒すが、自らも翌日に傷がもとで死に、ルテニアの軍は塚を築いて葬った。エッダで世界の終わりを生き延びる神が、ここでは相討ちで死ぬ英雄になっている。どちらが古い形かは決着していない。

図像と象徴

異教期の図像はない。17世紀アイスランドの写本 AM 738 4to(1680年頃)の39葉裏に「Wale」と銘のある素朴な線描があり、長い髪の人物が刃物を掲げている。本サイトの主画像はこれである。同じ葉の表に描かれているのはヘズで、殺した者と、それを討った者が一枚の紙の表と裏に並んでいることになる。ただしこれは17世紀の写字生の造形であって、異教期の図像ではない。

『詩語法』が挙げるこの神のケニングは「オーディンとリンドの子」「バルドルの復讐者のアース」「ヘズの敵にして殺し手」。持物も聖獣もなく、行為だけが名の内容になっている点は、「盲目のアース」「宿り木を射る者」と呼ばれるヘズと対をなす。二柱そろって、したこととされたことしか属性を持たない。

19世紀の挿絵は弓を持たせた。カール・エミール・デプラーが『北方ゲルマンの神々と英雄』(1882年)に寄せた《ヴァーリ》は、弓を手に森を行く若者を描く。『ギュルヴィたぶらかし』の「射当てのよい者」という一語から造形が引き出されたものである。原典で武器が明示されないため、近代の画家は矛を持たせることも剣を持たせることもあった。

系譜と関係

父はオーディン、母はリンド。異母の兄弟にバルドル、ヘズ、トール、ヴィーザルらがいる。ヴィーザルとは、ともに復讐者であり、ともにラグナロクを生き延びるという二重の対応をなす。二柱を並べて描いた近世以降の図版が多いのも、この対応による。

名をめぐる混乱がある。『ロキの口論』の散文の結びは「ロキの息子たち、ヴァーリとナリ(ナルヴィとも)が捕らえられた」と記し、ヴァーリは狼に変えられて兄弟を引き裂き、その腸でロキが縛られたとする。オーディンの子と同名の別人か、写本の混乱か——議論は続いている。ロキの子をこの名で呼ぶ箇所は原典に一度しか現れないのに対し、オーディンの子ヴァーリは『巫女の予言』と『バルドルの夢』の双方に現れる。

文化的足跡

北欧神話の神のなかで、ヴァーリは目的が最初から与えられている稀な存在である。一つの死から生まれ、その決着とともに役目を終え、それでいて世界の終わりを生き延びる。復讐が果たされなければ次へ進めないという前提を、13世紀の書き手が共有していたことの現れでもある。

デンマーク側では、名を変えながら物語が生き延びた。13世紀のラテン語年代記『リューの年代記』は『デンマーク人の事績』を下敷きに、ボーヨと呼ばれるスウェーデン王がホテールを殺してデンマーク王になったと記す。神々の復讐譚が、王統の交替譚に読み替えられている。現代の翻案でも、この神はもっぱら「復讐のためだけに生まれた者」として扱われる。

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領分・別名

親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承点線=異伝・別系統

リンド
収載データなし
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資料

Wikidata
Q846981 — 骨格データの出典
Commons
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