ボル
ボッル · ブル · Borr
ブーリの子でオーディン・ヴィリ・ヴェーの父。巨人ボルソルンの娘ベストラを妻とし、神の血と巨人の血がここで交わった。自ら行為することはなく、「ボルの子ら」という定型句のなかにのみ現れる。
解説
概要
ボル(Borr、ブル Burr とも)は、北欧神話で神々の系譜の第二代にあたる存在である。ブーリの子、ベストラの夫であり、オーディンとヴィリとヴェーの父である。名は古ノルド語で「息子」を意味する burr と同じ語で、ゲルマン祖語 *buriz(「生まれた者」)に遡るとする説が有力である。「穿つ者」と解する説もある。
『古エッダ』の詩と、スノッリ・ストゥルルソンの『エッダ』に名が見える。自ら行為する場面はなく、子らの父として呼ばれるときにだけ現れる。
神話・物語
『巫女の予言』第4節は、ボルの子らが大地を持ち上げ、名高いミズガルズを造ったと歌う。ここでボル自身は行為せず、三兄弟を指す「ボルの子ら」という呼び名のなかにのみ名を残す。
スノッリ『ギュルヴィたぶらかし』第6章は、この系譜を順序立てて語る。原初の牝牛アウズンブラが塩辛い霜の岩を舐めると、三日目に一人の男が現れた。美しく大きく力強いこの男がブーリで、その子がボルである。ボルは巨人ボルソルンの娘ベストラを妻とし、オーディン、ヴィリ、ヴェーの三人の息子が生まれた。続く第7章で、ボルの息子たちは原初の巨人ユミルを殺し、その身体から大地と海と天を造る。
母方の系譜は『高き者の言葉』にも現れる。第140節でオーディンは、ベストラの父ボルソルンの名高い息子から九つの力ある歌を学んだと語る。つまりオーディンは母方の叔父から知恵を受けたことになり、ボルの家系に巨人の側の知が流れ込んでいる。この叔父をミーミルとみる説もあるが、詩は名を挙げない。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
「ボルの子」はオーディンを指す呼び名として定着し、スノッリ『詩語法』もオーディンの呼び方の一つに挙げている。父の名が、子を呼ぶための名として働いている例である。
系譜と関係
父はブーリ、妻はベストラ、子はオーディン・ヴィリ・ヴェー。義父は巨人ボルソルン。神の血を引くボルと巨人の娘ベストラの結婚から世界の創造者が生まれるという点に、北欧神話の神々がそもそも巨人と混じり合った家系であることが表れている。
祖先・その子・三人の孫という三代の構造は、タキトゥス『ゲルマーニア』第2章が伝える、大地から生まれた神トゥイストとその子マンヌス、マンヌスの三人の息子という系譜と比べられてきた。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。