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ブラギ
PLATE — BRAGI
NORÐR · 北欧神話
BRAGI

ブラギ

ブラーギ · ブラギ神 · Brage

AM 738 4to, 41r(アイスランド語写本、1680年頃) PUBLIC DOMAIN

北欧神話の詩の神。雄弁と詩才で知られ、女神イズンを妻とする。9世紀の実在の詩人ブラギ・ボッダソンが神格化されたものとする見方が有力である。

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解説

概要

ブラギ(Bragi)は、北欧神話の神。アース神族に属し、詩と雄弁を司るとスノッリは記す。妻は林檎を守る女神イズンである。

ただしこの神には、成り立ちそのものに疑問符がついている。9世紀に実在したスカルド、ブラギ・ボッダソンが死後に神格化されたものとする見方が、今日では有力である。ブラギは古ノルド語・古スウェーデン語で人名としてよく使われた語であり、ヤン・デ・フリースは、神名のほうが人名から派生した二次的なものだろうと述べた。詩の神が、詩人から作られたことになる。

名は古ノルド語 bragr と結びつけられるが、この語には「詩」と「第一の、最も優れたもの」という二つの意味がある。どちらが神名の背後にあるのかは決着していない。スノッリは詩を意味する bragr がこの神の名に由来すると説明したが、ルドルフ・ジメクはこれを後付けと見る。誓いを立てるときに掲げる杯ブラガルフルも、「詩の杯」ではなく「首長の杯」と解するのが通例である。

神話・物語

物語らしい物語を持たない神である。伝わるのは、宴席での役どころだけである。

『ロキの口論』で、ロキがエーギルの館に押し入ったとき、最初に口を開くのがブラギである。彼は馬と剣と腕輪を差し出すから諍いをやめてくれと申し出る。ロキは、おまえは馬も腕輪もいつも足りない身だろう、ここにいるアースとアールヴのなかで最も戦を避け、射ることを恐れる者だ、と嘲る。ブラギは、外でならおまえの首を手に持っていると言い返すが、ロキは「席に座っていれば勇ましいな、腰掛けの飾りブラギよ」と切り捨てる。妻イズンが割って入って、この応酬は打ち切られる。北欧の神々のなかで、これほど明確に「戦えない者」として描かれる例はほかにない。

『グリームニルの言葉』は、最良のものを列挙する一節にブラギを置く——樹木のなかではユグドラシルの梣、船ではスキーズブラズニル、アースではオーディン、馬ではスレイプニル、橋ではビルレスト、そして詩人のなかではブラギ。ただしここで指されているのが神なのか、実在の詩人ブラギ・ボッダソンなのかは判別できない。

『シグルドリーヴァの言葉』は、ルーンが刻まれる場所を列挙するなかに「ブラギの舌」を挙げる。太陽の上、馬の耳と蹄、熊の掌、鷲の嘴、狼の爪、そしてブラギの舌。刻まれたルーンは削り取られ、蜜酒に混ぜられて、アース・アールヴ・ヴァン・人間に分け与えられる。言葉を司る者の舌が、言葉の素材として使われている。

スカルド詩の側では、ブラギは別の役を負う。『エイリークスマール』と『ハーコナルマール』——いずれも10世紀の追悼詩——で、彼はヴァルハラに迎えられた王を出迎える者として現れる。オーディンに命じられて戦死した王に呼びかけるのである。神としての地位ははっきりしないが、死者の館の接待役という位置は一貫している。

図像と象徴

持物として伝わるものはない。長い髭で描かれるのが通例だが、これは『ギュルヴィたぶらかし』の「長い髭のブラギ」という一句を近代の画家が拾ったものである。竪琴やハープは原典に一切現れない——ギリシアのアポローンやオルペウスの造形が、そのまま北欧に持ち込まれた結果である。

17世紀のアイスランド語写本 AM 738 4to は、この神を単独の立像として描く。手にしているものは判然としない。素朴な線描であり、後代の楽器を持つ姿とは無関係である。

竪琴を持つブラギの造形は、18世紀末のデンマークに始まる。ニコライ・アビルゴーが《弦楽器を持つ詩の神ブラギ》を描き、19世紀にはスウェーデンのニルス・ブロンメール《イズンとブラギ》(1846年)、C・E・デプラーやヴァールボムの挿絵がこれを踏襲した。ロマン主義が求めたのは「北方のアポローン」であり、原典に楽器がないことは問題にされなかった。北欧神話の図像が古典古代の型を借りて作られた経緯を、この神ほどはっきり示す例はない。

系譜と関係

妻はイズン。父をオーディンとする資料があるが、母も兄弟も伝わらない。系譜の乏しさも、この神が後から神々の列に加えられたとする見方を補強している。

実在のブラギ・ボッダソンは、9世紀前半のノルウェーの詩人で、伝統的に最初のスカルドと数えられる。『ラグナルスドラーパ』の断片が『スノッリのエッダ』に引かれて残り、盾に描かれた場面を詠む形式をとる——フースドラーパと同じ趣向である。この詩人と神を、資料はしばしば区別していない。スノッリ自身、『詩語法』の対話でエーギルの質問に答える語り手として「ブラギ」を登場させ、神話の解説者に仕立てている。詩の神が神話を語るという入れ子は、体系の整理者としてのスノッリの手つきをよく示す。

文化的足跡

現代アイスランド語で bragur は「詩、韻文」を意味し、この語は今も生きている。19世紀のスカンディナヴィアでは、ブラギは詩人の守護者として文芸協会や出版物の名に用いられた。デンマークの詩人イェンス・バッゲセンやスウェーデンのゴート同盟の周辺で、この神の名は「北方の詩」の看板として機能した。

現代の創作でブラギが主役に据えられることは少ない。戦えない神という原典の造形が、その理由の一端だろう。だが、詩人が神になったという成り立ちのほうは、北欧の詩の伝統がどれほど重んじられていたかを示す事実として残る。神々の列に一人だけ、人間の職業から昇格した者が混じっているのである。

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領分・別名

親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承点線=異伝・別系統

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資料

Wikidata
Q199959 — 骨格データの出典
Commons
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