フリッグ
Frigg
北欧神話のアース神族最高位の女神。オーディンの妃にして神々の女王で、結婚と母性を司る。あらゆる運命を知りながら語らない予見の力をもち、子バルドルの死を嘆いた。
解説
概要
フリッグ(Frigg)は、北欧神話におけるアース神族の最高位の女神である。古ノルド語の名は「愛されるもの」を意味する。主神オーディンの妃にして神々の女王であり、結婚と母性を司る。同時に、あらゆる者の運命を知りながらけっしてそれを語らない予見の力をもつ、オーディンにも比肩する賢き女神として描かれる。
神話・物語
フリッグは、湿地の館フェンサリルに住まい、侍女フッラや使者グナーを従える。オーディンとのあいだにバルドルをもうけた。史料に語られる事績は乏しいが、そのなかでもっとも名高いのがバルドルの死をめぐる物語である。
わが子バルドルが不吉な夢に悩まされたとき、フリッグはその死を恐れ、世界のあらゆるものを渡り歩いて、バルドルを傷つけまいという誓いを取りつけた。だが、幼く無害と見て見過ごしたヤドリギだけが誓いから漏れた。この一事をロキに探り当てられ、ロキはヤドリギの枝を盲目の神ヘズに握らせてバルドルを射させ、バルドルは落命する。『エッダ』は、フェンサリルでバルドルの死を嘆くフリッグの姿を伝える。この悲劇は、やがて世界の終末ラグナロクへと連なってゆく。
図像と象徴
古代のフリッグを描いた図像は伝わらない。天空の女神として雲を紡ぐ者ともされ、鷹の羽衣をまとって鳥に姿を変えたとも語られる。今日思い描かれる、糸を紡ぐ気高い女王という姿は、もっぱら近代の画家たちの筆によって形づくられた。本図も、雲を紡ぐフリッグを描いた19世紀初頭の挿絵である。
系譜と関係
夫はオーディン、子はバルドルらで、フィヨルギュンの娘とされる。豊穣と愛の女神フレイヤとは、司る領分も性格もよく似ており、両者はもともと一柱のゲルマンの女神フリヤに遡るのではないかとする説が根強い。英語の金曜日(Friday)は、この女神の名にちなむ。ローマの女神との対応づけでは、金曜がウェヌスの日(dies Veneris)にあたることから、ウェヌスと重ねられた。
文化的足跡
運命を知りながら口を閉ざす女神という造形は、フリッグに独特の陰翳を与えている。母として子を守ろうとしながら、定めを覆せなかったその物語は、北欧神話でもっとも心を打つ挿話のひとつとして、後世の詩や創作にくり返し取り上げられてきた。FGO・女神転生など現代の作品にも登場する。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。