フギンとムニン
フギンとムニン · フギン · ムニン
オーディンに仕える一対の鴉で、名は「思考」と「記憶」を意味する。日ごと世界を飛び回り見聞きしたことを告げる。オーディンは「フギンが帰らぬことより、ムニンのことをもっと恐れる」と語る。
解説
概要
北欧神話において、フギンとムニン(Huginn and Muninn、おおよそ「思考」と「記憶」あるいは「意志」)は、神オーディンに仕える一対の鴉である。世界(ミズガルズ)を飛び回り、彼に情報と噂をもたらす。
『古エッダ』『新エッダ』『ヘイムスクリングラ』、オーラーヴル・ソールザルソンの『第三文法論』、そして詩人たちの詩に確認される。
記述
『グリームニルの言葉』において、オーディンは次のように語る。
「フギンとムニンは、日ごと広い大地の上を飛ぶ。私はフギンが帰らぬのではないかと恐れる。しかしムニンのことをもっと恐れる」
思考が失われることより、記憶が失われることを恐れる——この一節は、北欧の詩において最も引用される箇所の一つである。
『新エッダ』は、二羽が朝に放たれ、朝食の時刻に戻ってオーディンの肩に留まり、見聞きしたことを耳元で告げると記す。それゆえオーディンは「鴉の神」(フラヴナグズ)と呼ばれる。
解釈
学者たちは、この二羽をオーディンのシャーマン的な心の飛翔——魂が身体を離れて世界を巡る——の表現とみる説を提出してきた。フギン(思考)とムニン(記憶)という名が、精神の働きそのものを指すためである。
ヴェンデル期(6〜8世紀)の兜と装身具に、鳥を伴う人物の図像が多数残る。オーディンと二羽の鴉の図像が、文献に先立って存在したことを示す。
鴉は戦場で死者を食う鳥であり、戦の神の従者としてふさわしい。北欧の詩において「鴉を養う」は「敵を殺す」を意味する常套句である。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ヴェンデル期の兜の一部である。鳥を伴う人物が刻まれ、オーディンを表す可能性がある。
関わる神格・伝承
オーディンの従者。狼ゲリとフレキと対をなす。
文化的足跡
二羽の鴉は、今日もオーディンの図像の定型として用いられる。ノルウェー空軍とスウェーデン軍の徽章にも採用されている。