クンティー
プリター · パールタヴィー
パーンダヴァ五兄弟の母。神々を招く真言を授かり、少女の頃に産んだカルナを川に流したことが、のちの悲劇の根をなしている。
解説
概要
クンティー(Kuntī / कुंती)は『マハーバーラタ』の登場人物で、クル王パーンドゥの第一妃、パーンダヴァ五兄弟の母である。ヤドゥ族の王シューラの娘として生まれ、父の叔父クンティボージャの養女となったことからこの名で呼ばれる。任意の神を招いて子を得る真言を授かったことが、この人物の生涯を決定した。五兄弟の母であると同時に、敵陣に立つカルナの母でもある。
神話・物語
少女の頃、聖仙ドゥルヴァーサスを丁重にもてなした礼として、神々を招く真言を授かった。好奇心からこれを試して太陽神スーリヤを呼び出し、カルナを産む。未婚での出産が露見することを恐れた彼女は、生まれたばかりの子を箱に入れて川へ流した。この一事が、のちに実の子どうしを戦わせることになる。
パーンドゥの妃となったのち、夫は聖仙の呪いによって女性に近づけぬ身となった。そこで真言が再び用いられる。法の神ダルマからユディシュティラ、風神ヴァーユからビーマ、インドラからアルジュナを得た。第二妃マードリーのためにも真言を唱えてやり、アシュヴィン双神から双子のナクラとサハデーヴァが生まれている。パーンドゥの死に際してマードリーが殉じたため、クンティーは双子も実子同様に育てた。
アルジュナがドラウパディーを得て帰り「得たものです」と告げたとき、托鉢の施物と思い込んで「みなで分かちなさい」と答えてしまったのも彼女である。母の言葉を偽りにできぬという理由から、ドラウパディーは五兄弟共通の妻となった。何気ない一言が動かしがたい定めに変わるという展開は、この叙事詩が好んで用いる型である。
開戦を前に、彼女はカルナを訪ねて出自を明かし、パーンダヴァ側へ移るよう説いた。カルナは友を裏切ることを拒み、代わりにアルジュナ以外の兄弟は殺さぬと約束する。どちらに転んでも五人しか残らぬという言い方で、母への答えとした。彼女が息子たちにカルナのことを打ち明けたのは、戦がすべて終わったあとである。
図像と象徴
独立した像容は伝わっていない。図像では、五人の子を伴う母として、あるいは川に赤子を流す場面として描かれる。象徴となるのは真言そのものであり、望むままに神を招く力が、そのまま制御しがたい結果を招くという逆説を担っている。
系譜と関係
生父はヤドゥ族の王シューラで、クリシュナの父ヴァスデーヴァとは兄妹にあたる。したがってクリシュナは甥である。養父はクンティボージャ。夫はパーンドゥ、共同の妃がマードリー。子はカルナ、ユディシュティラ、ビーマ、アルジュナ、育て子としてナクラとサハデーヴァ。
文化的足跡
戦後、彼女は義兄ドリタラーシュトラとガーンダーリーに従って森へ入り、山火事のなかで世を去ったと伝えられる。近現代の再話では、彼女に与えられる位置は大きく変わってきた。真言を軽々しく試した娘の過ちとして描く読みもあれば、社会が未婚の母に許さなかった選択の帰結として読む解釈もある。とりわけカルナを捨てた場面は、母としての愛と社会的な体面のあいだで引き裂かれる人物像として、小説や演劇で繰り返し取り上げられている。