ヤドゥ
ヤドゥ王 · ヤーダヴァ族の祖 · Yadu
ヤヤーティの長子でヤーダヴァ族の始祖。父の呪いを引き受けることを拒んだため王位を継げず辺境へ追われた。クリシュナとバララーマの祖にあたる。
解説
概要
ヤドゥ(Yadu)は、『リグ・ヴェーダ』をはじめとするインド神話の人物である。
月種族の王ヤヤーティとデーヴァヤーニーの子で、トゥルヴァスの兄にあたる。ドルヒユ、アヌ、プルの異母兄。サハスラジット、クローシュトリ、ナラ、リプの父である。
ヤーダヴァ族の始祖とされ、クリシュナとバララーマの祖にあたる。
神話・物語
父ヤヤーティがシュクラ(ウシャナス)の呪いによって老いたとき、千年のあいだ自分の代わりに呪いを引き受けてほしいと頼まれた。
ヤドゥはこれを拒む。そのため王国を譲ってもらえなかった。ヤヤーティの求めを拒んだ他の兄弟たちと同じく辺境へ追われ、そこでヤーダヴァ族の祖となった。
王位を継いだのは、呪いを引き受けた末子プルである。長子でありながら継承から外れるという構成が、この人物の位置を決めている。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
長子が拒み、末子が引き受けて王位を得るという型は、インドの王統譚に繰り返し現れる。年齢の順ではなく、父への献身の度合いによって継承が決まる。
同時にこの物語は、ヤーダヴァ族がなぜ本流の王統から外れているのかを説明する。クリシュナがクル族の王ではなく、ヤーダヴァ族の一員として『マハーバーラタ』に関わるのは、この分岐による。
系譜と関係
父はヤヤーティ、母はデーヴァヤーニー。兄弟はトゥルヴァス、ドルヒユ、アヌ、プル。
ヤーダヴァ族からは、クリシュナ、バララーマ、クリタヴァルマン、サーティヤキらが出る。『マハーバーラタ』において、この一族はクル族とパーンダヴァのいずれにも与し、内部で分裂した。
文化的足跡
ヤーダヴァという名は、今日のインドにおいて実在のカースト集団の名でもある。ウッタル・プラデーシュ州、ビハール州を中心に分布し、この神話上の祖の裔を称する。
日本語圏では、クリシュナの一族の祖として名が挙げられる程度である。しかし長子が王位を継がないという設定が、叙事詩全体の配置——なぜクリシュナが王ではなく助言者として振る舞うのか——を支えている。