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コンス
PLATE — ḪNSW
AEGYPTVS · エジプト神話
ḪNSW

コンス

クホンス · ホンス · ケンス

Walters Art Museum (54.395) PUBLIC DOMAIN

エジプト神話の月神。名は「渡る者」を意味し、夜空を渡る月の運行を指す。アメンとムトの子としてテーベ三柱神をなし、病を癒し悪霊を追う神として異国からも頼られた。

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解説

概要

コンス(ḫnsw / Khonsu)は、エジプト神話の月神である。名は「渡る者」を意味し、夜空を横切る月の運行を指す。テーベではアメンムトの子としてテーベ三柱神をなし、コム・オンボではセベクハトホルの子とされた。

ただし最古の姿は、月とも癒しとも無縁である。『ピラミッド・テキスト』の「カニバル讃歌」に現れるコンスは、死んだ王が神々の力を我がものとするために、その神々を屠って臓腑を取り出す執行者であった。コフィン・テキスト呪文310では母シェスメテトの子とされ、怒りの炎で心臓を焼く。呪文311は、死者がコンスに変身して神々の魔力を奪う方法を説く。「心臓を食らうコンス」の名がここにある。この役目は新王国期にアメミットへ移り、コンスは月と癒しの神へと姿を変えていった。

神話・物語

古い層のコンスは、冥界の「使者(ウェプウティ)」の一柱である。古王国から中王国の墓碑銘は、死者を罰し死をもたらす霊としてこの語を用いる。カニバル讃歌で彼が属する五柱の血に飢えた助手たちは、天に置かれた星辰の現れとも解される。

月神としての最初の徴はコフィン・テキスト呪文195・197に見え、死者はプントから帰るコンスに出会う。プントはエジプトの文学において東、すなわち日と月の昇る場所を意味する。

カルナックのコンス神殿の壁には、この神を軸とする創世神話が刻まれている。アメンが蛇の姿でヌンから現れ、隼の卵の形をとった精を原初の水に落とす。第二の原初の蛇であるコンスがこれを呑んで身ごもり、ワニとなって原初の丘へ渡り、口をすすいだのちベネネトのハトホルと交わる。こうしてテーベが生まれ、コンスは八柱神(オグドアド)を産んだ。ヘルモポリスの伝承ではアメン自身が八柱神の一員であるのに対し、ここではアメンは「八柱神の父たちの父」として枠の外に置かれる。同じ都市の神殿ごとに、創世の筋が書き分けられている。

癒す神としての名声を伝えるのがベントレシュ碑文である。異国ベクテンの王女が病に倒れ、遣わされた書記の手に負えなかったため、王がコンスの神像を送ると悪霊は退散した。神像は三年九か月のあいだ現地に留め置かれ、王が夢に黄金の隼の飛び去るのを見てようやく返された、という筋である。碑文はラメセス2世の治世を舞台にするが、実際の制作ははるかに後代の擬古文書であり、癒しの神の権威を後から築くために書かれたものである可能性が高い。

図像と象徴

定型は、ミイラのように体を包み、側頭に子どもの一房(サイドロック)を垂らした少年の姿である。首にはメナト頸飾、手には曲杖と殻竿、そしてジェド柱・アンク・ウアス杖を組み合わせた笏を握る。頭上には、満月の円盤を三日月が受ける形の飾りが載る。

もう一つの定型は隼頭である。ホルスと紛らわしいが、頭上が日輪とコブラなら太陽の神、満月と三日月ならコンスであって、区別は冠飾りが担う。ヒヒの姿もとり、これは同じ月神トートと共有する形である。二つの顔をもつ子どもとして描かれる稀な例は、月の見えない夜を指すと解される。

三日月の形は、エジプトの鎌形の刀と重ねられた。「鋭きコンス」という添え名はここから来る。子どもの姿と老いた姿の対比は、月の満ち欠けと年の循環に対応する。カルナックの銘文は「朝には子ども、夕には老人、年の初めには若者」と彼を呼び、プトレマイオス朝の碑文は太陽神とコンスを、東で出会う二頭の牡牛になぞらえた。三日月は若い牡牛、満月は老いた牡牛である。

後期には創造神としての図像も現れる。ワニの背に立ち、二つの隼頭とハゲワシの翼をもつ姿で、二つの頭は太陽と月を、ワニは制圧された原初の混沌を表す。本サイトが主画像に掲げるのは、末期王朝期の隼頭の青銅立像(ウォルターズ美術館蔵)で、頭上の満月と三日月が同定の決め手になる。

系譜と関係

アメンとムトの子。ただしアメンとコンスは、父と子であると同時に、老いた姿と若返った姿という同じ神の二相とも解された。アメンが周期的にコンスとして生まれ直すのだとすれば、母であるムトの位置もまた妻とも娘とも動く。

カルナック本宮の主形はコンス・ネフェルヘテプで、アメンの長子にして正統な後継者、テーベの神々のなかでアメンに次ぐ位に置かれる。この形の図像からは、ヒヒなど他の姿が意図的に排除された。もう一つの形コンス・パイルセケルとは司祭団を異にし、ベントレシュ碑文は両者を並べて登場させている。

エドフ・フィラエ・テーベでは、月の相を共有するトートと結んだコンス・トートが祀られた。カルナックのコンス神殿(ベネネト)ではヒヒが飼われ、この神の生き身として神託の儀礼に用いられている。月そのものを指す語イアフ(jꜥḥ)を神格化した古い月神イアフは、しだいにコンスに吸収されていった。エドフでは、オシリス神話で当地に納められたとされる「脚」に結びつけられ、「脚の子」と呼ばれる。

ギリシア語で書かれた誓約の文面では、コンスはヘーラクレースに擬された(インテルプレタティオ・グラエカ)。

文化的足跡

カルナックのアメン大神域内にあるコンス神殿は、ラメセス3世がそれ以前の神殿の跡に建てたもので、新王国期の神殿の姿をほぼ完全に伝える数少ない例である。門前からルクソール神殿へスフィンクス参道が延び、オペト祭にはこの道を三柱神の聖船が渡った。

コンスは誓いの神でもあった。カルナックの神殿では、借財の返済、離婚、相続をめぐる争いが、この神の名にかけて誓われて決着した。病から癒えたプトレマイオス4世は「その威を守り悪霊を追い払うコンスに愛されし者」と自称している。夜道を行く者を守り、野の獣から人を庇う神として、庶民の護符にも繰り返し現れる。

現代の漫画・映像作品にも名が出るが、造形も設定も作品ごとのものである。

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領分・別名

INTERPRETATIO — 同一視・同源
トート エジプト神話 同一視
月の相を共有するコンス・トートとしてエドフ・フィラエ・テーベで祀られ、カルナックのベネネトではヒヒが両者の生き身とされた
ヘーラクレース ギリシア神話 同一視
ギリシア語で書かれた誓約の文面でヘーラクレースに擬された(インテルプレタティオ・グラエカ)。ヘレニズム名ケセバイエオン

親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承点線=異伝・別系統

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資料

Wikidata
Q190521 — 骨格データの出典
Commons
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