セベク
ソベク · スーコス(ギリシア)
エジプト神話のワニの神。ワニの頭の人、あるいはワニそのものとして表され、『ピラミッド・テキスト』では「ネイトの子」とされる。第12王朝にファイユームで重んじられ、シェデト(クロコディロポリス)では生きたワニが化身として飼われた。のちラーと習合した。
解説
概要
セベクは、エジプト神話の、ワニの姿をした神である。ワニの頭をもつ人、あるいはワニそのものとして表される。ナイルとその豊穣に結びつき、荒々しい力の神として王権を守護する者ともされた。ファイユーム地方と上エジプトのコム・オンボが信仰の中心であった。
名の意味については議論があり、「孕ませる」を意味する語の使役形に由来するとみる説が多いが、「結び合わせる者」と解する説もある。
神話・物語
セベクは、古王国の『ピラミッド・テキスト』(とくに呪文317)にすでに現れる。そこでは王ウナスが「ネイトの子セベクとして現れた」と讃えられ、王はワニの神の生きた化身とされる。
『ファイユームの書』では、セベクはモエリス湖の原初の水から立ち現れ、ラーの現れとして創造の中心に立つ。のちの諸王朝では太陽神ラーと習合し、セベク・ラーとして崇拝された。
信仰
セベクが重んじられたのは中王国時代(前2055〜前1650年頃)で、とりわけ第12王朝のアメンエムハト3世のもとで、ファイユームでセベクのための事業が多く行われた。第12王朝最後の王で女王のセベクネフェルウは、「セベクの美」を名に負う。
ファイユームの中心都市シェデト(ギリシア名クロコディロポリス、「ワニの町」)は、最も名高い姿であるシェデトのセベクの本拠であった。そこの神殿では、生きたワニがセベクの化身として飼われ、死ぬとミイラにされた。カラニスでは、ペトスコスと呼ばれる姿が崇拝され、ミイラにしたワニがその祭祀像とされた。
上エジプトのコム・オンボは、とくにプトレマイオス朝とローマ時代に最大の祭祀の中心となった。そこの神殿は、セベクと大ホルス(ハロエリス)を並べて祀る二重の神殿である。
図像と象徴
セベクは、人の体にワニの頭をのせ、羽根飾りの冠や、太陽円盤に角を添えた冠をいただく姿で表される。ルクソール博物館には、セベクと並ぶアメンホテプ3世の方解石の像がある。
系譜と関係
母は女神ネイトで、『ピラミッド・テキスト』の「ネイトの子セベク」がその根拠となる。配偶神としては、豊穣の女神レネヌテトやハトホルの名が挙がる。コム・オンボでは大ホルスと並んで祀られた。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。