デリング
デリングル · デッリング · Dellingr
昼の神ダグの父。写本によって夜の女神ノートの三番目の夫とも、大地の女神ヨルズの夫とも伝えられる。名はおそらく「夜明け」を意味する。
解説
概要
デリング(古ノルド語 Dellingr、おそらく「夜明け」あるいは「輝く者」)は、北欧神話の神である。
『古エッダ』と『散文のエッダ』の双方に現れ、いずれも昼を人格化したダグの父と記す。『散文のエッダ』は写本によって、夜の女神ノートの三番目の夫とも、大地の女神ヨルズの夫とも伝える。
伝説的サガ『ヘルヴォルとヘイズレク王のサガ』にも言及がある。
神話・物語
『ヴァフスルーズニルの言葉』第24節で、オーディンは巨人ヴァフスルーズニルに、昼はどこから来るのか、夜とその潮汐はどこから来るのかと問う。第25節の答えはこうである——昼の父はデリングと呼ばれる、しかし夜はネルヴィから生まれた。
『ハーヴァマール』では、ドヴェルグのショーズレーリルが「デリングの扉の前で」名を伝えられていない呪文を唱えたと語られる。アース神族には力を、アールヴには繁栄を、フロプタテュールには知恵を歌ったという。
『フィヨルスヴィンの言葉』にも、スヴィプダグの問いのなかにこの名が現れる。
固有の物語は伝わらない。伝えられるのは、昼の父であるという系譜上の位置と、「デリングの扉」という表現だけである。
図像と象徴
図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
研究者はこの神を夜明けの人格化とみる。名が「夜明け」を意味しうること、そして昼の父であることが、その根拠である。
「デリングの扉の前で」という句が注目されてきた。夜明けの扉——夜と昼の境で呪文が唱えられるという設定であり、境界の時刻に呪術が働くという観念を示すと解される。イングランドの姓と地名の双方にこの名が現れる可能性も指摘されている。
系譜と関係
子はダグ。妻はノート、あるいはヨルズ。
ノートの夫は三人とされる。ナグルファリ(子はアウズ)、アンナル(子はヨルズ)、そしてデリング(子はダグ)である。夜が三度嫁ぎ、そのたびに異なる子を産むという構成であり、最後にようやく昼が生まれる。
文化的足跡
日本語圏では、ダグの父として名が挙げられる程度である。
しかし夜と昼の系譜は、北欧の宇宙観を考えるうえで見過ごせない。夜が先にあり、昼はその子として後から生まれる。順序が逆でないところに、この神話体系の時間感覚が現れている。