ナグルファリ
ナグルファーリ · Naglfari
夜の女神ノートの最初の夫でアウズの父。散文のエッダに一度言及されるのみ。ラグナロクの船ナグルファルの擬人化とみる説がある。
解説
概要
ナグルファリ(古ノルド語 Naglfari)は、北欧神話の人物である。夜の女神ノートの最初の夫であり、アウズの父にあたる。
言及は『ギュルヴィたぶらかし』の一箇所のみで、ノートの三人の夫のうちの一人として、そしてアウズという子をもうけたとだけ記される。それ以上の情報は伝わらない。
神話・物語
伝えられるのは、この一文に尽きる。
ルドルフ・ジメクは、スノッリがこの人物を創作したのではないかと推測する。ただしその理由は不明であるとも述べている。
名は、ラグナロクの際に死者の爪で造られた船ナグルファル(Naglfar)と近い形をとる。この船を擬人化したものと考える研究者もいる。
図像と象徴
図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
この人物をめぐって論じられるのは、名と、子の名の関係である。子アウズの名には三通りの原義があるとされる——「荒れ果てた」「空虚な」、「富」「所有物」、そして「運命」「死」。通常は二番目の「富」と解される。
しかし父ナグルファリを死者の船の擬人化とみるなら、アウズを三番目の意味に取り、「夜の闇と死者の船のあいだに生まれた死」と読む解釈も成り立つ。この読みを採る研究者もいる。
一文しか伝わらない人物の名が、子の名の解釈を左右する。北欧神話の資料状況をよく示す例である。
関わる神格・伝承
妻はノート、子はアウズ。
ノートの三人の夫は、ナグルファリ(子アウズ)、アンナル(子ヨルズ)、デリング(子ダグ)である。夜から生まれる三つの子——死(あるいは富)、大地、昼——という配列になる。
文化的足跡
日本語圏では、ラグナロクの船ナグルファルの名が広く知られる一方、この人物の名が挙げられることはまずない。
同じ語根を持つ船と人物が別々に伝わっているという事態そのものが、スノッリの記述をどう読むかという問題を提起している。