フィヨルギュン
フィヨルギュン · ヨルズ · Fjörgyn
北欧の大地の擬人化でトールの母。名はリトアニアのペルクーナス、スラヴのペルーン、ヴェーダのパルジャニヤと同語源で、雷神の名の語根が雷神の母の名になっている。男性形はフリッグの父とされる。
解説
概要
フィヨルギュン(Fjörgyn、あるいはヨルズ。古ノルド語で「大地」)は、北欧神話における大地の擬人化であり、雷神トール——オーディンの子——の母である。
男性形フィヨルギュンは、オーディンの妻である女神フリッグの父として描かれる。
両方の名が『古エッダ』と『新エッダ』に現れる。名をめぐって多くの説があり、学術的な議論の対象となってきた。
名
古ノルド語フィヨルギュンは、リトアニアの雷神ペルクナス、スラヴのペルーン、ヴェーダのパルジャニヤと同語源とされる。印欧祖語の *perkʷ-(「樫」あるいは「打つ」)に遡る。
雷神の名の語根が、北欧では雷神の母の名になっている。トール自身の名は別語源(*þunraz、「雷鳴」)である。
男女両形が存在することも特異である。女性形フィヨルギュンはトールの母、男性形フィヨルギュンはフリッグの父。同じ名の神が、二つの性で異なる位置を占める。
ヨルズ
「大地」を意味するヨルズは、フィヨルギュンの別名あるいは同一の女神とされる。詩においてトールは「ヨルズの子」と呼ばれる。
オーディンが大地を妻としてトールをもうけるという系譜は、天と地の結婚という印欧語族に広く見られる型に属する。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
名のみが伝わる神格である。物語を持たず、トールの母として、あるいは詩の言い換え(ケニング)のなかにのみ現れる。
関わる神格・伝承
子はトール。夫はオーディン。ヨルズと同一視される。男性形はフリッグの父。
ペルクナス、ペルーン、パルジャニヤと同語源。
文化的足跡
比較神話学において、フィヨルギュンの名は印欧語族の雷神の系譜を再構成する鍵の一つとされる。