ダグ
ダグル · Dagr
北欧神話の昼を人格化した神で、デリングと夜の女神ノートの子とされる。輝く鬣の馬スキンファクシに引かれて天を巡り、その鬣が空と大地を照らす。夜が昼を生むという系譜は、日数を夜で数えるゲルマンの慣習と結びつけて論じられる。
解説
概要
ダグ(Dagr、古ノルド語で「昼」)は、北欧神話における昼の神的な擬人化である。
『古エッダ』と『スノッリのエッダ』に現れる。両資料において、ダグは神デリングの子であるとされ、「昼を人類に引く」明るい鬣の馬スキンファクシと結びつけられる。
『スノッリのエッダ』は母を夜の擬人化ノートとする。ただし最古の写本 U(ウプサラ写本)ではデリングの妻でダグの母はノートの娘ヨルズであり、写本によって母が異なる。
神話・物語
夜ノートと昼ダグは、それぞれ馬に引かせた車に乗って天を巡る。ノートの馬はフリームファクシ(「霜のたてがみ」)で、そのくつわから落ちるしずくが朝露になる。ダグの馬はスキンファクシ(「輝くたてがみ」)で、そのたてがみが空と大地を照らす。母と子が交互に天を駆けることで、夜と昼が入れ替わるのである。
ノートは巨人ナルヴィの娘で、三度結婚した。最初の夫ナグルファリとのあいだにアウズを、次の夫アンナルとのあいだに大地ヨルズを、そしてデリングとのあいだにダグをもうけた。デリングの名は夜明けを意味するとみられ、昼は夜と夜明けの子ということになる。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ペーテル・ニコライ・アルボの《ダグ》(1874年)で、馬スキンファクシを駆るダグを描く。
系譜と関係
父はデリング、母はノート。馬はスキンファクシ。
昼と夜の神格化は、ギリシアのヘーメラーとニュクスと対応するが、北欧では夜が母である点が異なる。
文化的足跡
タキトゥスは『ゲルマーニア』で、ゲルマン人が日数を昼ではなく夜で数えると記しており、英語の fortnight(十四夜、二週間)にその名残がある。昼が夜の子とされる系譜は、この数え方と結びつけて論じられることがある。「ダグ」は今日もスカンディナヴィアの言語で「日」を意味し、人名としても用いられる。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。