グンロズ
グンレズ · グンレッド · グンロド
巨人スットゥングの娘。父が山中に隠した詩の蜜酒を守っていたが、オーディンに三夜の代償として三口を許し、すべてを飲み干されて奪われた。
解説
概要
グンロズ(Gunnlǫð、グンレズとも)は、北欧神話のヨトゥン。巨人スットゥングの娘で、父が山フニットビョルグの洞に隠した詩の蜜酒の番をしていた。オーディンはこの女性を通じて蜜酒を手に入れる。
名は古ノルド語 gunnr(戦い)に lǫð(招き)を継いだもので、「戦への招き」ほどに訳される。番人として与えられた役目と名の意味は、必ずしも噛み合わない。
登場する物語
事の起こりは殺害である。ドヴェルグの兄弟フィヤラルとガラルが賢者クヴァシルを殺してその血から蜜酒を醸し、続いて巨人ギリングとその妻を殺した。ギリングの息子スットゥングが償いとして蜜酒を奪い、フニットビョルグの岩の内に隠して、娘グンロズを番に据える。
『詩語法』が伝えるところでは、オーディンはベルヴェルク(「悪を為す者」)と名乗ってスットゥングの弟バウギのもとで一夏働き、報酬として蜜酒を一口所望した。スットゥングは拒む。オーディンはバウギに錐ラティで岩を穿たせ、蛇に姿を変えて穴を通り抜けた。洞の内で三夜をグンロズとともに過ごし、その代わりに三口の蜜酒を許される。だがオーディンは一口ごとに壺を一つずつ飲み干し——オーズレリル、ボズン、ソーンの三つをすべて空にすると、鷲となって飛び去った。
『高き者の言葉』第104〜110節は、これをオーディン自身の口から語らせる。そこでの語り口は『詩語法』と違い、女のほうを見ている。グンロズは黄金の椅子に彼を坐らせ、貴重な蜜酒を注いだ。その心づくしに対して、自分は悪い報いを返した——と老いた神は言う。第108節では、彼女の助けがなければ巨人の館から生きて帰れなかったと認め、第110節では、自分が誓った腕輪の誓いをどう信じられようか、と自問し、グンロズを泣かせて去ったと締めくくる。
同じ出来事が、片方では首尾よく運んだ策略として、もう片方では負い目として語られている。北欧神話で主神が自分の非を認める場面は多くない。
図像と象徴
異教期の造形は伝わらない。本サイトが掲げるのは、17世紀アイスランドの写本 AM 738 4to(1680年頃)41葉裏に描かれた素朴な線描である。同じ写本にはヘズ、フォルセティ、ヴァーリ、ヘーニルらの図もあり、『スノッリのエッダ』を読んだ近世アイスランド人が神話の登場人物をどう思い描いたかを一冊で示す資料になっている。
19世紀の画家はこの主題を好んだ。ローレンツ・フレーリック(1895年)、ヨハネス・ゲールツ、ジョージ・ライトらが《オーディンとグンロズ》を描いており、いずれも黄金の器を持つ女と、それを受け取る男という構図をとる。アンデシュ・ソーンも同名の油彩を残した。近代の図像は、蜜酒を「与える」瞬間を選ぶ。奪う場面ではなく、渡す場面が絵になっている。
ケニングでは、フリッグを指す言い方として「ヨルズとリンドとグンロズとゲルズの恋敵」が挙げられる。オーディンが関係を持った女たちの一覧が、正妻の名を言い換えるための材料になっているわけである。
関わる神格・伝承
父はスットゥング、叔父はバウギ。祖父にあたるギリングはドヴェルグに殺されており、この一族は蜜酒をめぐる連鎖的な殺害の被害者の側にある。蜜酒そのものは、もとをたどればクヴァシルの血である。
オーディンとの関係は、婚姻でも略奪でもない。三夜の代償として三口を許すという取引の形をとりながら、結果としてすべてを持ち去られる。リンドの場合が呪術と暴力による獲得だったのに対し、こちらは合意の外形を保ったまま反故にされている。主神が女から何かを得る型の、もう一つの変種である。
文化的足跡
詩を作ることは、北欧では飲むことだった。その蜜酒が人の世に届くまでの経路に、この巨人の娘が立っている。オーディンが詩の神であるのは、彼女が器を傾けたからである。
天文学では、土星の不規則衛星グンロズ(Gunnlod)と小惑星(657)グンレードがこの名を採っている。