プリアーポス
プリアポス · プリアプス · プリアーペイア
家畜・果樹・庭を守るギリシアの小さな豊穣神。過大な男性器で特徴づけられ、庭に立てられて実りを守った。医学用語プリアピズムの語源である。
解説
概要
プリアーポス(Πρίαπος)は、ギリシア神話の小さな豊穣神である。家畜、果樹、庭、そして男性器の守護者とされる。
過度に大きく、常に勃起した男性器によって特徴づけられる。医学用語のプリアピズム(持続勃起症)は、この名に由来する。
ローマの性愛美術とラテン文学において人気のある存在となり、しばしば猥雑で滑稽な詩集『プリアーペイア』の主題となった。
神話・物語
系譜は資料によって異なる。アプロディーテーとディオニューソスの子とするもの、ディオニューソスとキオネーの子とするもの、ヘルメースの父あるいは子とするもの、ゼウスあるいはパーンの子とするものがある。
伝えによれば、ヘーラーがまだ母の胎内にあるこの神に呪いをかけた。不都合な不能——交わるべきときに勃起を保てないこと——と、醜さと、下劣な心である。パリスの審判でアプロディーテーを自分より美しいと判じたことへの報復であった。別の伝えでは、ヘーラーの怒りと呪いは、この子の父が自分の夫ゼウスであったことによる。
他の神々はオリュンポスに住むことを許さず、地上へ投げ落として丘の中腹に置き去りにした。やがて羊飼いたちに見つけられ、その手で育てられる。
プリアーポスはパーンやサテュロスたちに加わり、多産と生長の霊となったが、不能によって常に満たされないままであった。
オウィディウス『祭暦』が伝える話がある。ニュンペーのロティスが宴で酔って眠り込んだところへ、プリアーポスが忍び寄った。抱こうとした寸前、シーレーノスの驢馬がけたたましく鳴いて一同を起こす。目覚めたロティスは彼を突き放し、逃れる手立てとして蓮の木に変えられた。機会を台無しにした驢馬を、プリアーポスは打ち殺したという。以後この神は驢馬を憎み、自らへの犠牲としてこれが殺されることを望んだ。同じ書の後段では、ロティスの位置にヘスティアーが置かれる。
オルペウス教の『プロートゴノス讃歌』では、「プリアーポス」は宇宙卵から生まれた最初の神エロース=パネースに与えられる称号である。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ポンペイのウェッティ家の入口に描かれたフレスコ画である。この神が自らの男性器を秤に載せる場面を描く。
古代においてこの図像が置かれた場所が、その機能を示している。家の入口、庭、果樹園——境界と実りの場である。過剰な性的表現は、笑いを誘うと同時に邪視を退ける魔除けとして働いた。ローマの家屋における男性器の意匠(ファスキヌム)は広く用いられており、この神の像もその系列に属する。
庭に立てられた木彫りの像がしばしば言及される。粗末な作りで、赤く塗られ、鎌を持って果実を盗む者を脅す。案山子に近い役割である。神殿を持たず、庭にいる神という点が、この神格の性格を決めている。
関わる神格・伝承
パーン、サテュロスたちと同じ、野と実りの霊の系列に属する。ローマではムトゥヌス・トゥトゥヌスと結びつけられた。
小アジアのランプサコス(ヘッレースポントス沿岸)が祭祀の中心とされる。ギリシア本土の神ではなく、周縁から入ってきた神格である。
文化的足跡
プリアピズム(priapism)という医学用語は、この神の名に由来する。持続勃起症を指し、緊急の処置を要する状態である。神名が病名になった例として、しばしば挙げられる。
18世紀から19世紀のヨーロッパでは、この神をめぐる古代の図像が「プリアーポス崇拝」として好事家の関心を集めた。リチャード・ペイン・ナイト『プリアーポス崇拝についての論考』(1786年)は、当時の英国で醜聞を招いた著作である。古代の宗教における性の位置づけをどう扱うかという問題が、近代の学問において最初に表面化した局面の一つにあたる。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。