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嫦娥
PLATE — 嫦娥
SINÆ · 中国神話・道教
嫦娥

嫦娥

姮娥 · 恒我 · 素娥

The Metropolitan Museum of Art(明代・唐寅に倣う) PUBLIC DOMAIN

中国神話の月の女神。夫の羿が西王母から得た不死の薬を盗んで飲み、月へ奔った。中秋節に祀られ、その名は中国の月探査計画に受け継がれている。

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解説

概要

嫦娥(じょうが/Cháng'é)は、中国神話の月の女神である。古くは姮娥(こうが)と表記された。前漢の文帝劉恒の名を避けるため、字形の似た「嫦」に改めたと説かれる。素娥とも呼ばれる。

不死の薬を盗んで月へ奔ったという一点だけが、二千年以上ぶれずに伝わっている。それ以外——盗んだ動機、盗んだ相手、月で何になったか——は資料ごとに違う。この物語は、その空白の大きさゆえに書き換えられ続けてきた。

神話・物語

最古の記録は、湖北省王家台の秦墓から出た戦国期の『帰蔵』の卦辞で、「昔、恒我(=姮娥)が不死の薬を盗む」とだけ記す。まとまった形になるのは前2世紀の『淮南子』覧冥訓で、羿が西王母から得た不死の薬を姮娥が盗んで飲み、月へ奔ったとする。後漢の高誘は『淮南子』の注ではじめて嫦娥を羿の妻と説明した。夫婦であるという設定は、この注釈から始まっている。

月で何になったかは分かれる。後漢の張衡『霊憲』は、嫦娥が月に身を託して蟾蜍(ヒキガエル)になったと記す。同書はまた、月へ行く前に占い師の有黄に易占を頼み、吉と出たと伝える。この蟾蜍への変身を、六朝以降の文人はしだいに切り離し、嫦娥は独立した美しい月の仙女として描かれるようになった。

盗みの動機も後世に書き換えられた。明清の通俗小説と近代の民話では、羿の弟子の逢蒙が薬を奪いに来たため、嫦娥がやむなく自ら飲む。裏切りが献身に反転している。『西遊記』では嫦娥は月宮の仙女の一人にすぎず、天蓬元帥が戯れた罰で猪八戒に転生する。悪女、犠牲者、天女——どれが本来かを問うことに、あまり意味はない。

『山海経』には、帝夋の妻で十二の月を生んだ常羲という女神が現れる。清の畢沅は常羲・尚儀こそ嫦娥の原型で、上古漢語の音の変化が別の名を生んだと注した。袁珂もこれを継いだが、確定した説ではない。

図像と象徴

標識は月そのもの、そして飛翔である。「嫦娥奔月」は袖と裙をなびかせて天へ昇る姿として類型化した。手に不死の薬の壺を持つ例、兎を抱く例が多い。

月宮の住人が一緒に描かれる。杵と臼で薬を搗く玉兎、桂の木を伐り続ける呉剛、そして蟾蜍。玉兎は戦国期の『楚辞』にすでに現れ、漢代の画像石では蟾蜍とともに薬を調える。月の模様を兎と読む見方は東アジアからインドまで広がるが、それは同じ模様を見た結果であって、伝承の共有を意味しない。

絵画では明代に画題として確立する。本ページの主画像は明代の《月の女神嫦娥》(メトロポリタン美術館蔵、唐寅に倣う)で、桂の枝を手に立つ姿に描く。文人画の系譜では、嫦娥は月に一人でいる者——孤独の比喩として詠まれた。晩唐の李商隠の詩「嫦娥」がその代表で、薬を盗んだ罰を毎夜の孤独として読み替えている。日本では月岡芳年『月百姿』が嫦娥の奔月を浮世絵に移した。

系譜と関係

夫は羿。ただし羿は、堯の時代に十の太陽を射落とした英雄と、夏代の有窮氏の后羿という別人が古くから混同されており、嫦娥の夫がどちらかは資料によって揺れる。両親の伝承はない。

不死の薬の出どころは西王母である。崑崙に住むこの女神が薬を管理し、羿に与えたという筋は『淮南子』の段階で固まっている。道教の月神である太陰星君とは別の神格で、民間信仰でも両者は区別される。日本のツクヨミやギリシアのセレーネーと並べられることがあるが、それは月神という機能(月神)の横断であって、起源の関係ではない。嫦娥は月を司る神というより、月に住むことになった人である。

文化的足跡

中秋節の月見が、この物語を年ごとに反復させてきた。元代の『説郛』には、満月の夜に団子を供えて嫦娥の名を三度呼ぶという民話が載る。海南島では、少女が水を張った器に針を入れ、嫦娥に運勢を占わせる習俗があった。

1969年、アポロ11号の月着陸を前に、地上管制官が乗員へ、大きな兎を連れた美しい娘を探すよう伝えた交信記録が残る。乗員は「うさぎ娘に気をつけておく」と応じている。2007年以降、中国の月探査機は「嫦娥」、その探査車は「玉兎」と名づけられた。神話の名が実際に月へ運ばれた例である。現代の創作でも月の女神として名が用いられるが、造形は作品ごとのものである。

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領分・別名

親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承点線=異伝・別系統

嫦娥
嫦娥
中国神話・道教
羿
羿
配偶者
収載データなし
嫦娥
嫦娥
中国神話・道教
収載データなし
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資料

Wikidata
Q466462 — 骨格データの出典
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