ナヴァドゥルガー
ナヴドゥルガー · 九ドゥルガー · Navadurga
ドゥルガーの九つの顕現。ナヴァラートリの九夜に一柱ずつ祀られ、マヒシャースラとの九日間の戦いの各段階に対応するとされる。一覧は文献によって異なる。
解説
概要
ナヴァドゥルガー(サンスクリット नवदुर्गा)は、ヒンドゥー教におけるドゥルガーの九つの顕現・形態である。ナヴァラートリとドゥルガー・プージャの期間にとりわけ篤く祀られる。
シャークタ派とシャイヴァ派の信徒のあいだでは、九柱をまとめて一柱の神格として扱うことも多い。
神話・物語
九つの形態は、魔王マヒシャースラとの九日間にわたる戦いにおけるドゥルガーの九つの段階と考えられている。十日目はヴィジャヤダシャミー(勝利の日)として祝われ、ヒンドゥー教の最も重要な祭の一つに数えられる。
一般に挙げられる九形態は、シャイラプトリー(山の娘)、ブラフマチャーリニー(苦行の女)、チャンドラガンター(月の鈴を戴く者)、クーシュマーンダー(宇宙卵を生む者)、スカンダマーター(スカンダの母)、カーティヤーヤニー、カーララートリー(黒き夜)、マハーガウリー(大いなる白き者)、シッディダートリー(成就を与える者)である。ナヴァラートリの九夜に一柱ずつが祀られる。
ただし一覧は文献によって異なる。『アグニ・プラーナ』が挙げるナヴァドゥルガーは、ルドラチャンダー、プラチャンダー、チャンドーグラー、チャンダナーイカー、チャンダー、チャンダヴァティー、チャンダルーパー、アティチャンディカー、ウグラチャンダーの九柱で、今日一般に唱えられる名とは一致しない。九という数が先にあり、名は伝統ごとに割り当てられたと見るべきである。
ナヴァラートリの祭では、九歳までの未婚の少女九人が九柱の化身として礼拝され、食事を供される。ドゥルガー・プージャにおけるナバパトリカー(「九つの葉」)の儀礼は、八種の植物の枝葉をバナナの木に結わえるものである。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ネパール・バクタプルに伝わるナヴァドゥルガー舞踊の一場面である。仮面をつけた踊り手が九柱の女神を演じるこの舞踊は、今日も継承されている生きた祭祀である。
九という数が、この神格群の骨格である。九夜、九形態、九人の少女、九つの葉。同じ数が祭の時間・神格・供物・参加者のすべてを貫いている。
九柱それぞれの図像は定型化されている。シャイラプトリーは牡牛に乗り三叉戟と蓮を持ち、ブラフマチャーリニーは数珠と水瓶を持ち、チャンドラガンターは虎に乗って額に半月の鈴を戴く——といった具合である。ナヴァラートリの期間、家庭や寺院にはこの九柱を一枚に収めた図像が掲げられる。
関わる神格・伝承
ドゥルガーの諸形態であるから、パールヴァティー、カーリー、チャンディーといった女神たちと連続する。シャークタ派の神学では、これらはいずれも唯一の大女神(マハーデーヴィー)の相と理解される。
同じく複数の女神を組にして数える体系としては、マートリカー(七母神ないし八母神)とマハーヴィディヤー(十智女神)がある。数を決めて女神を組織するという発想は、インドの女神信仰に共通する特徴である。
文化的足跡
ナヴァラートリは、今日のインドで最も広く祝われる祭の一つである。地域によって形は異なり、グジャラートではガルバーの踊り、ベンガルではドゥルガー・プージャの大規模な祭壇(パンダル)、南インドではゴーラヴという人形飾りが中心になる。
日本語圏で「九夜祭」の名は知られていても、その九夜が九柱の女神に対応しているという構造まで紹介されることは少ない。祭の期間そのものが神格の一覧と重なっているという点で、この体系はヒンドゥー教の祭祀を理解する手がかりになる。