チャンドラガンター
チャンドラガンタ · チャンドラカンター · Chandraghanta
ナヴァドゥルガーの第三。額に鈴の形の半月を戴き、獅子に乗って十臂に武器を握る。シヴァとの婚礼の場で、荒々しい花婿に釣り合う姿として現れた。
解説
概要
チャンドラガンター(サンスクリット चन्द्रघण्टा、「鈴としての月を戴く者」)は、ヒンドゥー教の大女神マハーデーヴィーの一形態で、魔族を滅ぼし信者を守る者として崇められる。ナヴァドゥルガーの第三であり、ナヴァラートリの三日目に祀られる。
『シヴァ・プラーナ』によれば、チャンドラシェーカラ(月を戴く者)の相におけるシヴァのシャクティにあたる。
神話・物語
婚礼をめぐる伝えが最もよく知られる。
長い苦行のすえ、パールヴァティーはついにシヴァと結ばれることになった。当日、シヴァは婚礼の行列とともに現れる。だがその姿は、誰も見たことのない花婿のそれであった。身体は灰にまみれ、首には蛇が巻きつき、髑髏の花輪を掛け、牡牛ナンディンに跨っている。後ろに続くのは奇怪な一行——幽鬼、精霊、苦行者、ガナたち——が、みな喚き、荒々しく踊っていた。パールヴァティーの一族は恐れおののき、祝いの場は恐怖と混乱に変わる。
これを見たパールヴァティーは静かに微笑んだ。一族の面目を保ち、シヴァの荒々しい姿に釣り合いをもたらすには、自らの神威を示さねばならないと悟ったのである。彼女はその場でチャンドラガンターに変じた。獅子に乗り、十の手に三叉戟、剣、弓、矢、棍棒、蓮などの武器を握って輝き現れる。額には鈴の形をした半月が光った——名はここに由来する。
この姿でシヴァに近づくと、シヴァは彼女をなだめ、もとの姿に戻るよう願った。彼女はこれに応じ、代わりにシヴァにも穏やかな姿をとるよう求める。こうして婚礼は盛大に執り行われた。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、2010年のコルカタ・カーリーガート、サンガシュリーのドゥルガー・プージャに祀られた像である。
図像の決め手は、額の半月である。それが鈴の形をとることが名の由来であり、他の八柱と見分ける標になる。乗物は獅子。十臂に武器を握る姿で表されることが多い。
物語の構造も見逃せない。この女神が武装するのは、敵を討つためではなく、婚礼の場の均衡を取り戻すためである。恐ろしい姿の花婿に対して、同じだけ恐ろしい姿の花嫁が現れる。そして双方が穏やかな姿に戻ることで儀礼が成立する。力の誇示が、対称性の回復として描かれている点が特徴的である。
関わる神格・伝承
パールヴァティーの一形態。前後にあたるのはブラフマチャーリニーとクーシュマーンダーである。
なお、英語版ウィキペディアはこの女神に魔族ジャトゥカースラとの戦いの物語を載せるが、典拠の示されない近年の加筆であり、本サイトでは採用していない。
文化的足跡
ナヴァラートリの三日目は、この女神に捧げられる。勇気と平静さが主題とされ、恐怖を退ける女神として祈られる。
婚礼の場面が主題であることから、婚姻に関わる祈願の対象ともされる。九柱それぞれが人生の段階に対応づけられるという読み方は、今日のナヴァラートリの実践において広く行われている。