ドゥルガー
ドゥルガ · チャンディー · マヒシャースラマルディニー
ヒンドゥーの女神。神々の力から生まれ、いかなる男神も倒せなかった魔牛アスラ・マヒシャを討った戦いの女神。獅子に乗り、多くの腕に神々から授かった武器を執る。デーヴィーの勇猛な相とされる。
解説
概要
ヒンドゥー神話の女神。神々の力を結集して生まれ、いかなる男神にも倒せなかった魔牛の悪魔マヒシャースラを討った、戦いと守護の女神である。獅子(あるいは虎)に乗り、幾本もの腕に神々から授かった武器を執る勇姿で知られる。宇宙を動かす女性原理シャクティの、勇猛にして憤怒の相とされ、パールヴァティーの一つの姿とも位置づけられる。名は「近づきがたきもの・要塞」を意味する。
神話・物語
その事績を伝える中心の典拠は、5〜6世紀ごろに成立した『デーヴィー・マーハートミヤ』(マールカンデーヤ・プラーナの一部)である。魔牛マヒシャースラは、いかなる男にも神にも殺されぬという恩寵を得て増長し、神々を天界から追い落とした。窮した神々——ブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァら——がそれぞれの怒りと力(テージャス)を放つと、それが一つに凝って女神が生じた。男でも神でもない存在を、というその一点が勝機であった。神々は各々の武器を彼女に授け、獅子を乗り物として与えた。女神は九夜にわたってマヒシャースラと戦い、水牛から獅子、象、戦士へと次々に姿を変えて逃れようとする悪魔を、ついに討ち取った。その勝利の日が、祭のヴィジャヤ・ダシャミー(勝利の第十日)である。異伝には、恩寵の条件を「女にのみ倒される」と語るものもある。
図像と象徴
ドゥルガーの定型は、魔牛を討つマヒシャースラマルディニー(「マヒシャースラを砕く者」)の姿である。獅子に乗り、八本ないし十本、時にそれ以上の腕を広げ、右手には三叉戟(トリシューラ)・剣・円盤・弓矢を、左手には法螺貝・鈴・盾などを構える。三叉戟は水牛の体を貫き、断ち切られた首から現れ出る悪魔の本体を刺し据える。凄惨な討伐の場でありながら、女神の表情はあくまで静謐に保たれるのが常で、この静と動の対比が図像の要である。最古級の作例には前1世紀ごろのテラコッタ板があり、グプタ朝以降に多腕の荘厳な形へと展開した。7世紀のマーマッラプラムの岩窟浮彫は、その代表として名高い。
系譜と関係
ドゥルガーは、シヴァの妃パールヴァティーの憤怒の顕現とされ、カーリーをはじめとする恐るべき女神たちと連なる。『デーヴィー・マーハートミヤ』では、別の悪魔との戦いのさなか、女神の額の憤りからカーリーがほとばしり出る。シャクタ派の神学では、これらの女神はいずれも唯一の大女神デーヴィーの相であって、ドゥルガーはその勇猛な戦いの面を担う。母神として篤い信仰を集める一方、悪を討つ軍神としての性格が際立つ。
文化的足跡
ドゥルガーの勝利を祝う祭は、九夜の女神祭ナヴァラートリと、とりわけベンガルのドゥルガー・プージャーとして今日も盛大に営まれる。叙事詩では、ラーマがラーヴァナとの決戦を前にドゥルガーを勧請したとも語られる。魔を討つ女神の像は、南アジアから東南アジアの美術に広く刻まれ、現代の宗教美術や祝祭のなかにも力強く生き続けている。