スカンダマーター
スカンダマータ · パダマーサニー · Skandamata
ナヴァドゥルガーの第五。軍神スカンダの母としての相で、幼子を膝に抱く。九柱のうち幼子を伴う唯一の形態である。
解説
概要
スカンダマーター(サンスクリット स्कन्दमाता、「スカンダの母」)は、ヒンドゥー教の大女神マハーデーヴィーの一形態で、軍神スカンダの母として崇められる。ナヴァドゥルガーの第五であり、ナヴァラートリの五日目に祀られる。
神話・物語
『シヴァ・プラーナ』が伝えるところはこうである。
シヴァとパールヴァティーは婚礼ののち千年にわたって睦みあっていた。この間、神々は魔族ターラカの跳梁に苦しんでいた。ヴィシュヌとブラフマーを先頭とする使節がカイラーサへ赴きシヴァに会う。急ぎ使節に応じたシヴァの精は地に落ちた。神々に促されたアグニは鳩の姿をとってこれを呑み込み、灼熱に苦しむ。
シヴァの指示に従い、アグニは七聖仙のうち六人の妻たちの朝の沐浴のなかにこれを置いた。妻たちは身ごもるが、その影響に耐えられず胎児を排し、それはガンガーへ流れて葦の茂みに至った。そこに神々しく輝く童子が現れる。
一方パールヴァティーは、私事を妨げられたうえに夫の精が失われたことに激怒し、使節に随行した神々の妻たちを不妊にする呪いをかけた。
マールガシールシャ月の白半、シャシュティー・ティティのカールティカ星宿に生まれたこの子は、パールヴァティーとシヴァに大きな喜びをもたらした。パールヴァティーは自ら乳を与えてこれを育て、神々はその誕生を祝う。この養育と母性の相が、スカンダマーターと呼ばれるようになった。彼女は子に神威の武器シャクティを授けた。
やがてスカンダはターラカを討ち、宇宙の秩序を回復することになる。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、2010年のコルカタ・カーリーガート、サンガシュリーのドゥルガー・プージャに祀られた像である。
四臂、三眼で、獅子を乗物とする。一方の手はアバヤ・ムドラー(畏れを除く印)を結び、もう一方の手で幼いスカンダを膝に抱く。残る二本の下の手は蓮の花を持つのが通例である。肌は明るい色に表される。蓮の上に坐す姿で描かれることが多いため、パダマーサニー(蓮に坐す者)とも呼ばれる。
子を抱く女神という図像は、ヒンドゥー教の女神像では意外に少ない。ナヴァドゥルガーの九柱のうち、幼子を伴うのはこの一柱だけである。
関わる神格・伝承
パールヴァティーの一形態。子はスカンダ(カールッティケーヤ)。前後にあたるのはクーシュマーンダーとカーティヤーヤニーである。
スカンダの誕生譚は、七聖仙の妻たち、アグニ、ガンガーを巻き込む複雑な筋を持ち、マートリカー(母神群)の成立とも関わる。この女神は、その物語の結末——母として子を抱く場面——を切り出したものといえる。
文化的足跡
ナヴァラートリの五日目は、この女神に捧げられる。母子の安寧を願う祈りが捧げられ、子を持つ女性の祈願の対象となる。
母としての相を独立した神格として立て、祭の一日を割り当てる。九柱の体系が、女神の生涯の段階——山の娘、苦行者、花嫁、創造者、母、戦士——を順に辿る構成になっていることが、この配置から見えてくる。