ヴィヤーサ
ドヴァイパーヤナ · クリシュナ・ドヴァイパーヤナ · ヴェーダヴィヤーサ
『マハーバーラタ』の作者とされる伝説的な聖仙。ヴェーダを四つに分けた編者であり、同時にこの物語の登場人物でもある。
解説
概要
ヴィヤーサ(Vyāsa / व्यास)は、『マハーバーラタ』の作者とされる伝説的な聖仙である。一つであったヴェーダを四つに配分(ヴィヤス)したことからこの名で呼ばれ、その意は「編者」である。プラーナの編者ともされ、『バーガヴァタ・プラーナ』は彼をヴィシュヌの化身の一つに数える。本名はドヴァイパーヤナ(島で生まれた者)。作者でありながら自ら登場人物として物語に関与するという、他に類のない位置を占める。
神話・物語
聖仙パラーシャラとサティヤヴァティーの子で、ヤムナー河の中洲で生まれたことからドヴァイパーヤナと名づけられた。母が後にクル王シャーンタヌの妃となったため、彼はクル王家の血縁に連なる。
その関与が決定的になるのは、王家の血統が絶えかけたときである。異父弟ヴィチトラヴィーリヤが子を残さず死に、ビーシュマは誓いゆえに跡継ぎをもうけることを拒んだ。そこで母サティヤヴァティーは、婚前に産んでいたヴィヤーサを呼び寄せる。ニヨーガ(夫を失った妻が別の男との間に子を得る慣行)により、アンビカーからドリタラーシュトラ、アンバーリカーからパーンドゥ、そしてアンビカーの代理を務めた侍女からヴィドゥラが生まれた。恐ろしい姿の聖仙を前にアンビカーが目を閉じたために子は盲目に生まれ、アンバーリカーが青ざめたために子は色白に生まれたと語られる。侍女だけが恐れずに迎えたため、ヴィドゥラは三人のうち最も賢明であったという。叙事詩の全登場人物の運命が、この一夜に発している。
以後も彼は要所で現れる。ガーンダーリーに百人の子を得る恩寵を与え、産み落とされた肉塊を百に分けるよう指示した。ドラウパディーが五人の夫をもつことに難色を示す父ドルパダには、前世の因縁を説いて納得させている。追放中のユディシュティラを訪ねて教えを授け、戦後には嘆く老王ドリタラーシュトラのために、死者たちを一夜だけ河から呼び戻したとも伝えられる。
物語の成立そのものも語られる。全篇を心に成し終えた彼が、書き取る者を求めてブラフマーに相談すると、ガネーシャが推された。ガネーシャは、筆を止めずに済むならという条件を出し、ヴィヤーサは、意味を解さぬまま書いてはならぬという条件で応じたという。難解な詩節を挟んで考える間を稼いだという説明が添えられる。
図像と象徴
長い髭と結い髪をもつ老聖仙として描かれる。多くの場合、書き取るガネーシャと対で表され、語る者と記す者という組み合わせが図像の型をなす。象徴は写本と数珠である。
系譜と関係
父は聖仙パラーシャラ、母はサティヤヴァティー。異父弟にチトラーンガダとヴィチトラヴィーリヤ。ニヨーガによる子としてドリタラーシュトラ、パーンドゥ、ヴィドゥラがあり、パーンダヴァとカウラヴァの双方にとって祖父にあたる。妻との間に後継者で弟子のシュカがある。
文化的足跡
ヴィヤーサは個人の名であると同時に、時代ごとにヴェーダを整理する役職の名でもあるとされ、各カルパに一人ずつ現れると説かれる。ヒンドゥーの伝統では師を敬う日をグル・プールニマー(ヴィヤーサ・プールニマー)と呼び、彼の誕生日として祝う。文献学の観点からは、『マハーバーラタ』は長期にわたって成長した層状の作品であり、単一の作者を想定することはできない。ヴィヤーサという名は、その集積を一人の作者に帰する伝統的な枠組みとして理解されている。