ドルパダ
ヤジュニャセーナ · パンチャーラ王 · プリシャタの子
パンチャーラ国の王でドラウパディーの父。旧友ドローナを見下したことから半国を奪われ、復讐のための祭祀で二人の子を得た人物。
解説
概要
ドルパダ(Drupada / द्रुपद)は『マハーバーラタ』の登場人物で、南パンチャーラ国の王である。名は「堅く据えられたもの」あるいは「柱」を意味し、ヤジュニャセーナの名でも呼ばれる。父はプリシャタ、都はカーンピリヤ。旧友ドローナを身分の違いから突き放したことが、この叙事詩の主要な因縁の一つを生んだ。祭火から生まれた二人の子——ドリシュタデュムナとドラウパディー——を通じて、彼の復讐は物語全体の展開に組み込まれてゆく。
神話・物語
ドルパダとドローナは、ドローナの父である聖仙バラドヴァージャのもとでともに学んだ親友であった。王となった暁には王国の半ばを与えると、若き日のドルパダは約している。しかし父の死後に王位を継いだ彼は、貧窮して子に牛乳も与えられぬドローナが助けを求めて訪ねてきたとき、身分の違いを理由に旧交を否み、乞食のように扱って追い返した。
ドローナはビーシュマに招かれてクル王家の武芸師範となる。修業を終えた弟子たちに彼が求めた謝礼(グル・ダクシナー)は、ドルパダの捕縛であった。アルジュナを中心とするパーンダヴァがパンチャーラを攻め、縛られたドルパダはドローナの前に引き立てられる。ドローナは命を助けたうえで、かつての約束のとおり王国の半ばを自らのものとした。
この屈辱を晴らそうとしても、武力ではドローナに及ばない。そこで彼は、ドローナを殺しうる子を得るための祭祀(ヤジュニャ)を行った。聖仙ウパヤジャとヤジャを祭官として営まれたこの儀式から生まれたのが、ドリシュタデュムナと、のちに五兄弟の妻となるドラウパディーである。復讐の願いが、そのままクルクシェートラの戦いの引き金となる娘を生み落とすという構成になっている。
娘のために開いた婿選びでは、巨大な弓を引き、五本の矢を同時に放って回転する輪の向こうの的を射抜くという課題が与えられた。バラモンに扮したアルジュナがこれを果たし、ドルパダは彼を婿として迎える。もっとも、五兄弟共通の妻とするという申し出には難色を示し、聖仙ヴィヤーサが前世の因縁を説いてようやく承諾した。
図像と象徴
固有の像容は伝わっていない。図像に現れるのは、婿選びの場や、宮廷にパーンダヴァを迎える場面である。ロサンゼルス郡立美術館が所蔵するカーングラー派の『マハーバーラタ』画帖(18世紀末)の一葉は、後者を描いた作例として知られる。象徴となるのは、彼が復讐のために焚いた祭火そのものである。
系譜と関係
父はプリシャタ。子にドリシュタデュムナ、ドラウパディー、シカンディンのほか、サティヤジット、ウッタマウジャス、ユダーマニユら十一人の息子がいたと伝えられる。娘の婚姻によってパーンダヴァ五兄弟の岳父となり、ドローナとは友情と敵意の双方によって生涯結ばれ続けた。多くの子はクルクシェートラの戦いで命を落とし、ドリシュタデュムナ、シカンディン、ユダーマニユ、ウッタマウジャスは最終日の夜にアシュヴァッターマンに討たれている。
文化的足跡
クルクシェートラの戦いではパーンダヴァ側に立ち、七十二万人分の働きをするとされるマハーラティの一人に数えられた。十五日目、マツヤ国のヴィラータ王とともにドローナと戦い、ともに討たれる。旧友どうしが最後に戦場で相まみえ、一方が他方を討ち、その日のうちに討った側もまた旧友の子への欺きによって首を落とされるという展開は、この叙事詩が繰り返し描く報いの連鎖の典型である。
近現代の再話では、彼はしばしば「約束を軽んじた者」として読まれてきた。若き日の誓いを果たしていれば何も起こらなかったという読み方であり、身分制が友情を断ち切る場面としても取り上げられる。原典自身はドローナの側の執拗さも隠しておらず、どちらか一方に非を帰する書き方はしていない。