ヤムナー
ヤムナー · ヤミー · ジャムナー
ガンジス川最大の支流ヤムナー川の女神。太陽神スーリヤの娘で死者の主ヤマの双子の妹。リグ・ヴェーダの兄妹の対話は近親相姦の禁忌を語る最古の文献の一つ。亀に乗る姿で寺院の門に配され、ガンガーと対をなす。
解説
概要
ヤムナー(Yamunā)は、ヒンドゥー教における川の女神である。ヤムナー川——ガンジス川の最大の支流で、インド最長の支流——を神格化したものである。
太陽神スーリヤとサンジュニャーの娘で、死者の主ヤマの双子の妹とされる。それゆえヤミーとも呼ばれる。
神話・物語
ヤマとヤミー。 『リグ・ヴェーダ』第10巻第10歌は、ヤミーが双子の兄ヤマに交わりを求め、ヤマがこれを拒む対話を伝える。ヤミーは「人類の祖となるために」と説き、ヤマは「兄妹の交わりは罪である」と退ける。人類最初の兄妹の対話であり、近親相姦の禁忌を語る最古の文献の一つである。
ガンガーとの対。 ヤムナーはガンガーと対をなす。両河はプラヤーガ(現在のプラヤーグラージ)で合流し、そこは最も聖なる沐浴の地とされる。ガンガーが白、ヤムナーが青と表され、二つの水の色の違いが合流点で目視できる。
寺院の門の両側に、ガンガーとヤムナーの像を配する形式がグプタ朝以降に定着した。ガンガーはマカラ(水獣)に、ヤムナーは亀に乗る姿で表される。
クリシュナ。 ヤムナー川はクリシュナの物語の舞台である。ヴァスデーヴァが赤子のクリシュナを籠に入れて渡ったとき、川は水を分けて道を開いた。クリシュナが蛇王カーリヤを退治したのもこの川であり、ゴーピーたちと戯れたのもこの岸辺である。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、マトゥラーのヴィシュラーム・ガートである。ヤムナー川の沐浴場である。
亀を乗物とすることが、この女神を規定する。ガンガーのマカラに対し、より穏やかな水を表す。
死者の主ヤマの妹であることも重要である。ヤムナーの水に浸る者は、ヤマの罰を免れるとされた。死の神の妹が、死からの救いを与える。
関わる神格・伝承
父はスーリヤ、母はサンジュニャー、双子の兄はヤマ。ガンガーと対をなす。クリシュナの物語の舞台。
文化的足跡
ヤムナー川は今日、世界で最も汚染された河川の一つとされ、その浄化は宗教的な意味を伴う政治課題となっている。聖なる川が汚れているという事態が、現代インドの環境問題の象徴になっている。
なおヒンドゥー教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。