テオニム THEONYM · 世界神話アーカイブ 神格を検索
アルコノスト
PLATE — АЛКОНОСТ
SLAVI · スラヴ神話
АЛКОНОСТ

アルコノスト

Alkonost

作者不詳(19世紀のルボーク版画) PUBLIC DOMAIN

スラヴ(ロシア)の伝承に伝わる、人間の女の頭をもつ楽園の鳥。その歌声を聞いた者は我を忘れるという。名はギリシアのアルキュオネ神話に由来し、姉妹の鳥シリンとしばしば対に描かれる。

01

解説

概要

アルコノスト(Алконост / Alkonost)は、スラヴ神話、とりわけ古ロシアの伝承に伝わる幻獣である。鳥の体に人間の女の頭をもつ楽園の鳥として描かれ、その歌声はあまりに美しく、聞いた者は地上のいっさいを忘れてしまうという。中世ロシアの年代記や聖堂の彫刻に現れ、近世には民衆版画ルボークの画題として広く親しまれた。

登場する物語

アルコノストの名は、ギリシア神話のアルキュオネ(Ἁλκυόνη)に遡る。風の神アイオロスの娘アルキュオネは、夫とともに神々の怒りを買い、ゼウスによって夫を落雷で奪われた。嘆きのあまり海に身を投げた彼女は、憐れんだ神々によってカワセミ(ἀλκυών, halcyon)へと姿を変えられた。カワセミが真冬に海上へ巣をかけ、その間だけ海が凪ぐという「アルキュオネの日々(halcyon days)」の伝承は、そのままアルコノストにも受け継がれている。アルコノストは真冬に海辺で卵を産み、それを海へ転がすと、数日のあいだ海は凪ぎ、やがて卵は浮かび上がって孵るという。異教の層ではアルコノストは嵐を呼び、また鎮める風の霊とされ、キリスト教の層では楽園にあって聖人に歌を捧げ、来たるべき喜びを告げる鳥とされた。この二重の性格は、スラヴの信仰の重なり(二重信仰)をよく映している。

図像と象徴

アルコノストは、鳥の胴に女の顔をのせ、しばしば冠または光輪をいただいた姿で表される。この半人半鳥の造形は、地中海のセイレーンや、同じくギリシア由来の姉妹の鳥シリン(セイレーンに由来する名)と系譜を同じくする。13世紀のウラジーミルのドミトリエフスキー聖堂や、ユーリエフ・ポリスキーのゲオルギエフスキー聖堂の石彫には、すでにこの種の鳥女の像が刻まれている。近世の民衆版画では、着彩された華やかな一枚絵として大量に刷られ、市や縁日で売られた。年を経るほど羽の色が鮮やかになるとも語られる。

関わる伝承

姉妹とされるシリンとの対比が、この鳥の位置をよく示す。両者は同じ楽園の鳥でありながら、しばしば喜びと悲しみ、光と闇として対に語られる。名の由来もまた対をなす——アルコノストがアルキュオネ(カワセミ)に、シリンがセイレーン(Σειρήν)に遡る。古い伝承では両者の区別は必ずしも明確でなく、ルボークのなかで一つの鳥に融合することもあった。予言と天上を司る鳥ガマユンを加えた三羽が、ロシアの楽園の鳥として並称される。

文化的足跡

アルコノストとシリンを不朽の主題に押し上げたのは、19世紀ロシアの画家ヴィクトル・ヴァスネツォフである。1896年の油彩《シリンとアルコノスト——歓喜と悲嘆の歌》は、一本の樹に止まる二羽の鳥女を描く。淡い羽のアルコノストはこれから訪れる楽園を約束して歌い、暗い羽のシリンは失われた楽園を悼んで歌う——構図はそう読まれるのが一般的だが、どちらを歓喜とし、どちらを悲嘆とするかは解釈が割れる。この絵はブロークら象徴派の詩人にも霊感を与えた。現代でも、その幻想的な造形はゲーム・アニメや音楽の題材としてしばしば取り上げられている。

02

領分・別名

03

資料

Wikidata
Q867336 — 骨格データの出典
Commons
Alkonost — 図像カテゴリ