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エウェル
PLATE — EMER
CELTAE · ケルト神話
EMER

エウェル

エメル · エウェル・イングヴェン · Eimhear

ハロルド・ロバート・ミラー(C. スクワイア『ケルト神話伝説』1905年 挿絵) PUBLIC DOMAIN

アイルランド神話のクー・フーリンの妻。謎かけの応酬で英雄と契りを結び、のちに異界の女に夫を奪われかけた。

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解説

概要

エウェル(Emer)は、アルスター物語群に登場する女性で、英雄クー・フーリンの妻である。フォルガル・モナハの娘。物語は彼女に「女の六つの賜物」——美貌、声、甘やかな言葉、知恵、針仕事の腕、そして貞節——が備わっていたと記す。

名は古アイルランド語で Emer と綴られるが、語中の m は弱まって /ṽ/ と発音された。日本語で「エウェル」と写すのはこの音による。

神話・物語

アルスターの人々はクー・フーリンに似合いの妻を国じゅうに探したが、彼はエウェル以外を望まなかった。ダブリン州ラスクの父の館を訪ねた彼は、謎めいた言葉のやりとりで彼女に求婚する。互いの言葉の裏を読み解く応酬であり、彼女は自らの胸を「甘美な果実の平原」と呼んで、まずは功名を立てよと応じた。武勲がそれに値するようになったなら夫として受け入れる、というのが彼女の答えである。

父フォルガルはこの縁組に反対した。変装してアルスターへ赴いた彼は、スコットランドの名高い女戦士スカアハのもとで武芸を学ぶよう勧める。試練に耐えきれず死ぬだろうと踏んでのことであった。修行のあいだ、フォルガルはエウェルをムンスターの王ルガドに与えようとしたが、彼女がクー・フーリンを愛していると知った王は結婚を辞退している。

修行を終えて戻った英雄に、父はなお娘を渡さなかった。クー・フーリンは砦を攻めて二十四人を討ち、エウェルを連れ出し、宝を奪う。フォルガル自身は城壁から落ちて死んだ。ここに至って彼女はようやく婚姻を受け入れる。

コンホヴァル・マク・ネサには、臣下の婚礼における初夜の権があった。行使すればクー・フーリンが黙っていない。行使しなければ王の権威が損なわれる。折衷案として、王は婚礼の夜をエウェルと過ごすが、二人のあいだにはドルイドカフバズが寝ることになった。

夫には多くの女がいたが、彼女がただ一度嫉妬したのは、異界の女ファンドに夫が心を奪われたときである。『クー・フーリンの病臥』はこれを語る。刃を手に恋敵のもとへ向かった彼女は、しかしファンドの想いの深さを目にして身を引くと告げた。その潔さに打たれたファンドのほうが、夫マナナン・マクリルのもとへ帰ることを選ぶ。マナナンが霧の外套を二人のあいだで振ると、クー・フーリンとファンドは二度と会えなくなり、夫婦は忘却の酒を飲んで一件を記憶から消した。

アイフェの子コンラがアイルランドへ父を探しに来たとき、三人目の挑戦者として立ったのが夫であった。エウェルは、あれはあなたのただ一人の子だと告げたが、彼は聞き入れなかった。槍で討ち果たしてはじめて、妻の言葉が正しかったと知る。

図像と象徴

主画像は、ハロルド・ロバート・ミラーがチャールズ・スクワイア『ケルト神話伝説』(1905年)に寄せた挿絵で、クー・フーリンを諫めるエウェルを描く。古代の図像はなく、視覚像はすべてケルト復興以降のものである。

物語が彼女に与える標識は、言葉である。求婚の場面で交わされる謎かけ、恋敵の前で身を引くと告げる言葉、そして我が子だと告げて容れられなかった言葉。武で語る夫に対し、彼女は一貫して言葉で立っている。それが最後の場面で通じなかったことが、この夫婦の物語の結び目になっている。

系譜と関係

父はフォルガル・モナハ、夫はクー・フーリン。夫がスカアハのもとで契ったアイフェの子コンラは、彼女にとって継子にあたる。

古い稿本と後代の増補で、彼女の描かれ方は変わる。古い『エウェルへの求婚』は謎かけの機知に重心を置き、後代の稿本は物語を膨らませて英雄の修行譚を長く語る。近代の再話ではしばしば貞淑な妻に単純化されるが、原典の彼女は、功名を立てるまで結婚しないと言い切り、夫の恋を前にして自ら身を引くと決める人物である。

文化的足跡

W・B・イェイツの戯曲『エウェルのただ一度の嫉妬』(1922年初演)は、『クー・フーリンの病臥』を日本の能の様式を強く取り入れて書き直したものである。イェイツがクー・フーリンを主題に書いた五篇の戯曲の一つにあたる。スコットランド・ゲール語の詩人ソーリー・マクリーンが1943年に刊行した詩集『エウェルへの詩』は、20世紀のゲール語文学で最も重要な作の一つに数えられる。

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領分・別名

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資料

Wikidata
Q1245793 — 骨格データの出典