マンドーダリー
マンドダリー · マヤの娘 · パンチャカニヤーの一
羅刹王ラーヴァナの妃でインドラジットの母。夫にシーターを返すよう説き続けたが容れられず、五人の貞女の一人に数えられている。
解説
概要
マンドーダリー(Mandodarī / मंदोदरी)は、叙事詩『ラーマーヤナ』に登場する女性で、羅刹王ラーヴァナの妃、インドラジットの母である。アスラの工匠マヤの娘。夫の非を繰り返し諫め、シーターをラーマのもとへ返すよう説き続けたが、聞き入れられなかった。その徳をもって、名を唱えれば罪が消えるとされる五人の貞女(パンチャカニヤー)の一人に数えられる。
神話・物語
出生については諸説が伝わる。ヴァールミーキ本は、工匠マヤと天女ヘーマーの娘とし、母は娘を産んだのち天界へ戻り、彼女と兄弟姉妹は父のもとに残されたとする。テルグ語版はまったく別の筋を語る。前世は天女マドゥラーで、パールヴァティーの留守中にシヴァを誘惑して子を宿したため、怒った女神に呪われて蛙の姿に変えられた。井戸のなかで十二年のあいだ許しを乞い続けたので、シヴァが彼女を美しい女に戻してマンドーダリーと名づけ、自らの娘として育てたという。この版では、彼女がラーヴァナの妃となったとき十二年前のシヴァの精が再び働き、そこから生まれたのがインドラジットであるとされる。ランガナータ・ラーマーヤナはさらに別で、パールヴァティーが作った人形をシヴァが乙女に変えたのが始まりとする。
婚姻の経緯は簡潔である。世界征服の遠征から帰る途上、マヤの館に立ち寄ったラーヴァナが彼女を一目見て心を奪われ、ヴェーダの正式な儀式に従って妻とし、ランカーへ連れ帰った。
彼女の役どころは、諫める者である。夫がシーターをさらったのちは幾度も、他人の妻を奪うことの非を説き、返すよう求めた。だが忠告が容れられることはなかった。最後の決戦においても夫の傍らに立ち続け、夫と子はいずれもラーマとの戦いで命を落とす。
図像と象徴
図像に現れるのは、宮殿で夫に語りかける場面である。サンフランシスコ・アジア美術館が所蔵するムガル本『ラーマーヤナ』の一葉(1595〜1605年)は、外でラーマとその軍勢が集うなか、彼女が夫のもとへ歩み寄る場面を描いており、この人物の位置を端的に示す。象徴となるのは、聞き入れられない言葉そのものである。
系譜と関係
父はアスラの工匠マヤ、母は天女ヘーマー。夫はラーヴァナ、子はインドラジット(メーガナーダ)ほか。義弟にクンバカルナとヴィビーシャナ、義妹にシュールパナカーがいる。兄がその夫を討ち妹まで手にかけようとしたとき、彼女がこれを押しとどめたと伝えられる。
文化的足跡
ヴァールミーキ本は夫と子の死後の彼女について語らない。だがタイの『ラーマキエン』をはじめとする地方の叙事詩では、戦後にヴィビーシャナと再婚したとされる。敗れた王家の妃が新王に迎えられるという展開は、王権の継承をめぐる古い観念を映すものとして論じられることがある。
パンチャカニヤー(アハリヤー、ドラウパディー、クンティー、ターラー、そして彼女)の一人に数えられる点も特筆される。五人はいずれも通常の貞節の規範からは外れた境遇にありながら、その名を唱えることが罪を除くとされてきた。羅刹王の妃という立場にありながら、正しさを語り続けた者としてこの列に加えられている。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。