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ゼピュロス
PLATE — ΖΈΦΥΡΟΣ
HELLAS · ギリシア神話
ΖΈΦΥΡΟΣ

ゼピュロス

ゼフュロス · ゼフィロス · ファウォニウス(ローマ)

Stefano Bolognini PUBLIC DOMAIN

ギリシア神話の西風の神。四方の風アネモイの一柱で、春を告げる穏やかな風とされる一方、恋の物語では容赦のない神として語られる。

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解説

概要

ゼピュロス(Ζέφυρος / Zephyrus)は、ギリシア神話で西風を司る神である。北風ボレアース、南風ノトス、東風エウロスとともに四方の風アネモイをなす。名は西を指す語に由来し、線文字Bの粘土板にすでに ze-pu-ro の形で現れる。同じ粘土板には「風の女祭司」の語も見え、風の祭祀がミュケーナイ期にさかのぼることを示す。春を告げ、花を開かせる穏やかな風とされる一方、恋にまつわる物語では容赦のない神として描かれる。ローマではファウォニウスと呼ばれた。

神話・物語

恋の相手は多く、そして多くは不幸に終わる。スパルタの王子ヒュアキントスに思いを寄せたが、彼がアポローンを選んだため、円盤投げの最中に風を吹かせて円盤の軌道を曲げ、少年の頭を打ち砕いた。その血からヒュアキントスの花が生まれる。ただしこの筋には異伝がある。ゼピュロスの代わりに兄弟のボレアースを立てる形があり、また風の神がまったく登場せず、アポローンの過失として語る形も広く伝わる。風の神が花の起源譚に関わるという型そのものは、ボレアースにも共通している。

花のニンフクローリスを奪って妻とした話は、オウィディウス『祭暦』第5巻がローマのフローラの由来として語るものである。同じ詩人によれば、彼は詫びとして花の領分を妻に与えた。

『オデュッセイア』では、アイオロスが他の風をすべて袋に詰めてオデュッセウスに渡し、ゼピュロスだけを解き放って船を故郷へ送り出す。航海に適した風という評価がここに表れている。アプレイウスの語るエロースとプシューケーの物語では、崖に取り残された娘を宮殿へ運ぶ役を担う。

図像と象徴

風の神は、翼を持ち、頬を膨らませ、あるいは衣を大きくはためかせる姿で表された。アテナイの「風の塔」は八角形の各面に八方の風を浮彫にした建物で、西面のゼピュロスは若い姿で飛び、衣の裾に花をいっぱいに抱える。名が刻まれているため同定の確かな、数少ない古代の作例である。同じ建物の北面のボレアースが厚着の老人として彫られているのと較べると、季節と気質の対比がそのまま造形になっていることが分かる。

ポンペイのナヴィーリオ家の壁画は、ゼピュロスとクローリスの婚礼を描いたものと解されている。ルネサンス以後は、ボッティチェッリ《春》の右端で木立から身を乗り出す青灰色の風の神が、この神の姿を決定づけた。同じ画家の《ヴィーナスの誕生》でも、貝を岸へ吹き寄せる風として左上に現れる。頬を膨らませて吹くという古代以来の型が、ここでも守られている。

系譜と関係

父は星々の神アストライオス、母は曙の女神エーオース。兄弟に三方の風がある。虹の女神イーリスを妻としたとも、ハルピュイアのポダルゲーとのあいだにアキレウスの神馬クサントスとバリオスをもうけたとも伝えられる。馬の姿で交わったとするこの伝えは、風の速さを血統として説明しようとした産物である。アイスキュロスは彼を大地の子とし、系譜には揺れがある。ローマのフローラの夫ファウォニウスは、この神のラテン名にほかならない。

文化的足跡

「ゼファー(zephyr)」の語は、英語をはじめとする近代語で「そよ風」を意味する普通名詞として定着した。薄手の織物や、快速をうたう鉄道車両の名にも用いられている。西風が春をもたらすという観念そのものは、チョーサー『カンタベリー物語』の冒頭をはじめ、ヨーロッパの詩に繰り返し現れる。地中海の西風が雨と春を運ぶという実際の気候が、その背景にある。

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領分・別名

親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承点線=異伝・別系統

アストライオス
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資料

Wikidata
Q467515 — 骨格データの出典
Commons
Zephyrus — 図像カテゴリ