ノトス
ノトス · アウステル · Notus
ギリシアの南風の神で、アストライオスとエーオースの子。晩夏と秋の熱風で作物を枯らし嵐をもたらす。今日のシロッコに対応する。アテーナイの風の塔では水瓶を傾ける若者として表される。
解説
概要
ノトス(Notus)は、ギリシア神話における南風の神である。四方の風の神アネモイの一柱で、暁の女神エーオースと黄昏の神アストライオスの子である。
性格
ノトスは晩夏と秋の風であり、大嵐をもたらす者とされた。作物を枯らす熱風であり、また収穫の後の嵐をもたらす。
ヘーシオドス『神統記』は、ボレアース、ノトス、ゼピュロスを「神々から出た有益な風」とし、他の風——ティューポーンの子とされる突風——を有害なものとして区別する。
しかし実際の描写において、ノトスは破壊的である。『イーリアス』はノトスが山に霧をかけると歌い、『オデュッセイア』ではオデュッセウスの船を襲う。
エジプトとリビュアからの熱い南風は、地中海世界において最も恐れられた風であった。今日のシロッコに対応する。
四方の風
四方の風の神は、ボレアース(北)、ノトス(南)、エウロス(東)、ゼピュロス(西)である。うち北風と西風は神話に多く現れるが、南風と東風は名のみが記されることが多い。
アテーナイの「風の塔」(前1世紀)には、八方の風がそれぞれ擬人像として浮彫にされている。ノトスは水瓶を傾ける若者として表され、雨をもたらす風であることを示す。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、アテーナイの風の塔のノトスの浮彫である。
水瓶が、この神の象徴である。北風ボレアースが法螺貝を吹く老人として表されるのに対し、南風は水を注ぐ若者である。
関わる神格・伝承
父はアストライオス、母はエーオース。兄弟はボレアース、エウロス、ゼピュロス。
ローマではアウステルと呼ばれた。
文化的足跡
アテーナイの風の塔は、古代の気象観測と時計の建築として、今日もアゴラに残る。八つの風の擬人像は、風の神の図像として最もよく保存された作例である。