エウロス
エウロス · スバソラーヌス · Eurus
ギリシアの東風(南東の風)の神。ヘーシオドスの三風には含まれず、後代に四方の風の一柱として加えられた。アテーナイの風の塔では、外套に身を包んだ髭の老人として浮彫にされている。
解説
概要
エウロス(Εὖρος / Euros)は、東風、とくに南東から吹く風の神である。北風ボレアース、南風ノトス、西風ゼピュロスと並ぶ四方の風の一柱とされるが、ヘーシオドス『神統記』の風の系譜には名がなく、後代に四方位をそろえる形で加えられた。
神話・物語
『神統記』(378〜380行)は、アストライオスとエーオースの子としてゼピュロス、ボレアース、ノトスの三柱だけを挙げる。エウロスをこの兄弟に加え、同じ父母の子とするのは後代の資料である。
ホメーロスでは名が現れる。『イーリアス』第2巻では、エウロスとノトスがイーカリアの海を波立たせる比喩が用いられ、『オデュッセイア』第5巻では、筏のオデュッセウスを四方の風が代わる代わる翻弄する場面にエウロスも加わる。いずれも自然の風として語られる。
人格をもった姿が最もはっきりするのは、ウェルギリウス『アエネーイス』第1巻である。風の王アイオロスが洞窟から風を放つと、エウロスとノトスが真っ先に海へ襲いかかり、アエネーアースの船団を散り散りにする。海の騒ぎに気づいたネプトゥーヌスは、エウロスとゼピュロスを名指しで呼びつけ、自分の領分を乱した不遜を叱って、主人のもとへ帰れと命じる。
北風ボレアースはオーレイテュイアをさらい、西風ゼピュロスはヒュアキントスの死に関わる物語をもつが、エウロスにはそれにあたる固有の話が伝わらない。
図像と象徴
アテーナイのローマ時代のアゴラに建つ「風の塔」(前1世紀、キュッロスのアンドロニーコスの建造)は、八角形の塔の上部に八方の風の擬人像を浮彫にしている。南東の風エウロスは、外套に身を固く包み、右腕まで衣の内に隠した髭の老人として表される。18世紀にこの塔を実測したスチュアートとレヴェットの『アテネの古代遺物』(1762年)は、この浮彫に、アテーナイでは蒸し暑く陰鬱で多くの雨をもたらす風という説明を添えている。本サイトの主画像は、この浮彫の写真である。
系譜と関係
父はアストライオス、母はエーオース(後代の資料による)。兄弟はボレアース、ノトス、ゼピュロス。ローマでは南東の風をウォルトゥルヌスと呼び、エウロスに当てた。
文化的足跡
地中海の東寄りの風の呼び名としては、のちに「レヴァンテ」などの語が用いられるようになり、エウロスの名は古典の詩と、風の塔に倣った近代の風見や装飾のなかに残った。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。