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クローリス
PLATE — ΧΛΩΡΊΣ
HELLAS · ギリシア神話
ΧΛΩΡΊΣ

クローリス

クロリス · フローラ(ローマ)

Sandro Botticelli PUBLIC DOMAIN

ギリシア神話の花のニンフ。西風ゼピュロスにさらわれて妻となり、花の領分を与えられた。ローマのフローラと同一視される。

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解説

概要

クローリス(Χλωρίς / Chloris)は、ギリシア神話で花を司るニンフである。名は「淡い緑」「若草色」を意味する χλωρός に由来し、芽吹いたばかりの色そのものを指す。同じ名で呼ばれる女性は神話に数人おり(テーバイのアムピーオーンの娘など)、混同されやすい。花のニンフのクローリスは、ローマのフローラと結び付けられて広く知られるようになった。

神話・物語

その物語をまとまった形で伝えるのは、ギリシアの文献ではなくオウィディウス『祭暦』第5巻である。フローラ自身が語るところによれば、もとはクローリスという名で野を歩いていたが、西風のゼピュロスに見初められて奪われた。ゼピュロスは彼女を正式に妻とし、償いとして花の領分を与えた。以来その庭には四季の花が絶えず、息を吐けば花が生まれるという。

ギリシア側でこの筋を明示的に語る古い資料は残っていない。ローマの古い女神フローラにギリシア風の由来譚を与えるために、オウィディウスが組み立てた可能性が高い。ギリシアの名を当てはめる操作(インテルプレタティオ・グラエカ)が、逆にギリシア神話の側の物語として流通した例である。名前だけが先にあって、話は後から付いた——という順序を疑ってみる必要がある。

図像と象徴

古代に彼女を単独で描いた作例は乏しい。ポンペイのナヴィーリオ家から出た第四様式の壁画は、ゼピュロスとクローリスの婚礼を主題としたものと解されており、有翼の風の神と若い女が寄り添う姿を描く。

図像として決定的だったのは、ボッティチェッリ《春》(1480年代)である。画面右端で、青灰色の風の神が木立から身を乗り出して若い女をつかむ。女の口からは花が吹きこぼれ、その隣には花柄の衣をまとって花を撒く女が立つ。同じ人物の変身の前後を一枚の画面に並べたものと読まれてきた。オウィディウスの数行が絵画の構図になった、稀な例である。以後の絵画で「クローリス」は、この場面の被さらわれ役としてしか描かれなくなる。

系譜と関係

夫はゼピュロス。二人のあいだにはカルポス(「果実」)が生まれたと伝えられる。風が吹き、花が咲き、実が結ぶという順序が、そのまま系譜の形を取っている。ローマではフローラと同一視されたが、フローラの側には専属の祭司と祭日があり、ニンフにすぎないクローリスとは祭祀の重みが釣り合わない。同一視が対等な置き換えとは限らない例である。

文化的足跡

「クローリス」の名は、近代の詩でしばしば牧歌的な女性の名として用いられた。ヘンデルら18世紀の作曲家のカンタータにも、この名の羊飼いの娘が現れる。ギリシア語 χλωρός のほうは、葉緑素(クロロフィル)や塩素(クロール)といった、色を語源とする学術語のなかに残った。

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領分・別名

INTERPRETATIO — 同一視・同源
フローラ ローマ神話 同一視
オウィディウス『祭暦』第5巻。ローマの古い花の女神フローラに、ギリシアのニンフ・クローリスの名と由来譚を当てはめたインテルプレタティオ・グラエカ。ただしフローラには専属祭司と祭日があり、対等な置き換えではない。

親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承点線=異伝・別系統

ΧΛΩΡΊΣ
クローリス
ギリシア神話
ΖΈΦΥΡΟΣ
ゼピュロス
配偶者
収載データなし
ΧΛΩΡΊΣ
クローリス
ギリシア神話
収載データなし
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資料

Wikidata
Q1075258 — 骨格データの出典
Commons
Chloris — 図像カテゴリ