インドラーニー
シャチー · アインドリー · マーヘーンドリー
インドラの配偶神で、シャチーとも呼ばれ、七母神(サプタマートリカー)の一柱。『リグ・ヴェーダ』に自らを誇る讃歌がある。『マハーバーラタ』では神々の王となったナフシャの求婚を知略で退けた。七母神としては象に乗り金剛杵を執る。
解説
概要
インドラーニー(Indrāṇī / इन्द्राणी)は、インドラの配偶神であり、サプタマートリカー(七母神)の第四に数えられる女神である。シャチー、アインドリー、マーヘーンドリーの名でも呼ばれる。ヴェーダにすでに名が見え、後代に母神の体系へ組み込まれた。
神話・物語
『リグ・ヴェーダ』において、彼女は最も幸福な妻として自らを誇る讃歌(10.159)に登場する。名のシャチーは「力」「巧み」を意味し、インドラの力そのものを指す語でもあった。夫の異名シャチーパティ(シャチーの主)はこれに由来する。
『マハーバーラタ』は、傲慢な神々の王ナフシャが彼女を奪おうとした説話を伝える。夫が罪を負って身を隠したあいだ、玉座に就いたナフシャが彼女を求めた。彼女は聖仙たちに担がせた輿で来るようにと条件を出し、急かされた聖仙アガスティヤに蹴られたナフシャは蛇となって地に落ちたとされる。
七母神の一員としては、『デーヴィー・マーハートミヤ』第八章に現れる。インドラから生じた力が女性の姿をとったものとされ、象に乗り、金剛杵を執って戦った。
図像と象徴
黄金色の肌をもち、多くの眼を身にそなえた姿で描かれることがある。四臂に金剛杵(ヴァジュラ)と突き棒を執り、乗騎は白象アイラーヴァタ。千の眼という夫の特徴を受け継いでいる。本サイトが掲げるのは、アムステルダム国立美術館所蔵のインドラーニー像である。
系譜と関係
インドラの配偶神。プロマンあるいはプロマヤという名のアスラの娘とする伝えがある。子にジャヤンタら。サプタマートリカーの体系では第四の位置にあり、ブラーフマニー、ヴァイシュナヴィー、マーヘーシュヴァリー、カウマーリー、ヴァーラーヒー、チャームンダーと一組をなす。
文化的足跡
配偶神としての彼女と、母神としての彼女とは、成立の経緯を異にする。ヴェーダにおける妻としての姿が先にあり、後代の女神信仰の体系が、インドラの力の女性形として同じ名を組み込んだ。
日本ではインドラが帝釈天として受容されたのに伴い、その妃も舎脂(しゃし)の名で経典に現れる。
なおヒンドゥー教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。