チャームンダー
チャームンディー · チャンダとムンダを討つ者
サプタマートリカー(七母神)の第七。他の六柱と異なりドゥルガー自身の怒りから生じ、痩せ衰えた姿で表される女神。
解説
概要
チャームンダー(Cāmuṇḍā / चामुण्डा)は、サプタマートリカー(七母神)の第七に数えられる女神である。名は、魔神チャンダとムンダを討ったことに由来する。他の六柱が男性神の力の女性形であるのに対し、彼女だけは女神ドゥルガー自身の怒りから生じた点で性格を異にする。痩せ衰えた恐るべき姿で表され、カーリーとほとんど区別されない。
神話・物語
『デーヴィー・マーハートミヤ』第七章が伝える。魔神シュンバとニシュンバが送り込んだ将チャンダとムンダに対し、ドゥルガーは怒りに眉をひそめた。その眉間から黒い肌の恐るべき女神が躍り出て、二将を討ち取る。首を差し出された女神ドゥルガーは、チャンダとムンダを討ったゆえに汝はチャームンダーと呼ばれるであろうと告げた。
続く第八章では、七母神の一員として魔神ラクタビージャとの戦いに加わる。地に落ちた血の一滴ごとに分身が生じるこの魔神に対し、彼女は舌を戦場に広げて血が地に触れる前に呑み尽くし、際限のない増殖を絶った。
この二つの場面はいずれもカーリーの事績としても語られ、両者を同一とみるか別とみるかは文献によって分かれる。『デーヴィー・マーハートミヤ』の本文自体が両方の名を用いており、区別は必ずしも明確でない。
図像と象徴
痩せて肋の浮いた身体、落ち窪んだ眼、乱れた髪をもち、髑髏を連ねた花環をかける。乗騎は梟あるいは屍。火葬場を場とし、供物には血と酒が捧げられる。
象徴となるのは痩せ衰えた身体である。豊かさや母性ではなく、飢えと死そのものを形にした姿であり、七母神のなかで最も異質な造形をなす。
系譜と関係
ドゥルガーの怒りから生じた者とされ、男性神の力の女性形ではない。サプタマートリカーの体系では末尾に置かれ、ブラーフマニー以下の六柱と一組をなすが、由来において唯一これらと異なる。マハーヴィディヤーの体系ではカーリーと重ねて理解される。
文化的足跡
七母神の浮彫において、彼女はつねに末尾に置かれ、痩身と梟によって識別される。単独の像も多く、5世紀以降の作例が各地に残る。ヒマーチャル・プラデーシュのチャームンダー・デーヴィー寺院をはじめ、主要な聖地がある。
シャークタ派における彼女の位置は特異である。六柱が既存の男性神の体系を女性形に写したものであるのに対し、彼女は女神自身から生じた。母神群に一柱だけ由来を異にする神格が加えられていることは、既存の神々の体系に女神信仰を接続しようとする過程で、なお還元しきれない核が残されたことを示すとする読みが提出されてきた。