シュンバとニシュンバ
シュンバ · ニシュンバ · スンバ・ニスンバ
男には討たれぬ恩寵を得て三界を奪ったアスラの兄弟。女神を妃としようとして戦いを挑み、討たれたと語られている。
解説
概要
シュンバとニシュンバ(Śumbha / Niśumbha)は、『デーヴィー・マーハートミヤ』に登場するアスラの兄弟である。三界を奪って神々を追い、女神ドゥルガーを力ずくで妃としようとして討たれた。同書の第五章から第十章にわたる後半部は、この兄弟との戦いを主題とする。
神話・物語
兄弟は苦行によって、男には討たれぬという恩寵を得ていた。これによって天界を奪い、インドラをはじめとする神々を追放する。神々がヒマーラヤで女神に祈ると、パールヴァティーの身体から光り輝く女神が現れた。カウシキー(鞘から出た者)と呼ばれ、パールヴァティーのほうは黒く残ってカーリカーとなったとされる。
その美しさを聞いた兄弟は、使者チャンダとムンダを遣わして妃となるよう求めた。女神は、自分を戦いで負かした者の妻となると答える。怒った兄弟は将を次々に送った。ドゥームラローチャナは女神の一喝で灰となり、チャンダとムンダは女神の眉間から生じたチャームンダーに討たれ、ラクタビージャはカーリーに血を呑み尽くされて倒れた。
ついに弟ニシュンバが討たれると、兄シュンバは女神を難じた。多くの女神の助けを借りて戦うのは驕りではないか、と。女神はこれに答えて、われは唯一であり、この世に他の者はないと告げ、諸女神を自らのうちへ収めた。そして一対一で戦い、シュンバを討ったとされる。
多くの女神が一つに帰するというこの一段は、シャークタ派の一元論を示す典拠として最も重んじられる箇所である。
図像と象徴
固有の像容は伝わっておらず、独立した礼拝像の伝統もない。図像に現れるとすれば、女神に討たれる場面である。象徴となるのは「男には討たれぬ」という恩寵であり、その条件を満たすために女神が立てられるという構図が、この物語の全体を規定している。
系譜と関係
アスラの兄弟。配下の将にチャンダ、ムンダ、ラクタビージャ、ドゥームラローチャナらがある。対する女神の側にはドゥルガー、カーリー、そして七母神(サプタマートリカー)が並ぶ。魔神の側が兄弟であり、女神の側が一つの女神の諸相であるという対比が、この物語の構図をなす。
文化的足跡
ドゥルガー・プージャーとナヴァラートリの祭は、マヒシャースラ討伐とこの兄弟との戦いを二つの中心とする。前者が第二章から第四章、後者が第五章から第十章にあたり、『デーヴィー・マーハートミヤ』はこの二つの戦いを軸に構成されている。
「われは唯一であり、この世に他の者はない」という女神の言葉は、シャークタ派の思想を要約するものとして繰り返し引用されてきた。多神の体系のなかで一元論を主張する典拠として、インド思想史においても重要な位置を占める。