シャクニ
サウバラ · ガーンダーラ・ラージャ · ドゥヴァーパラの化身
ガンダーラ王家の出でドゥルヨーダナの伯父にあたる策士。骰子を自在に操り、パーンダヴァから王国を奪う賭博を仕組んだ人物。
解説
概要
シャクニ(Śakuni / शकुनि)は『マハーバーラタ』の登場人物で、ガンダーラ王スバラの子である。妹(あるいは姉)ガーンダーリーが盲目王ドリタラーシュトラに嫁いだため、ドゥルヨーダナらカウラヴァ百王子の伯父にあたる。骰子を自在に操る術に長け、パーンダヴァから王国を奪う賭博を仕組んだ人物として知られる。二番目に悪い賽の目ドゥヴァーパラの化身とされ、叙事詩は一貫して彼を邪悪な策士として描く。
神話・物語
物語における彼の役割は、賭博の一点に集約される。ユディシュティラの皇帝即位式の豪奢に打ちのめされたドゥルヨーダナに対し、彼は自分なら骰子で相手からすべてを奪えると持ちかけ、ドリタラーシュトラを言葉巧みに説き伏せて集会の場を設けさせた。渋々応じたユディシュティラを挑発し、財産、王国、弟たち、本人自身、そして妻ドラウパディーまでを次々と賭けさせて奪う。この一夜が両家の対立を決定的にし、クルクシェートラの戦いへ道を開いた。
叙事詩は「ドゥルヨーダナは怨恨よりなる大樹である。カルナはその幹である。シャクニはその枝である」と述べ、彼を献策者として位置づける。もっとも、パーンダヴァを焼き殺そうとした館の策はドゥルヨーダナ自身のもの、牧場視察の企ては主にカルナの提案であり、賭博以外に目立った策謀があるわけではない。その牧場視察では、ガンダルヴァ族との争いにカルナともども敗走している。
戦においては、単なる策士ではない。開戦前のビーシュマの評は、彼を一人前の戦士とし、その軍は退くことなく多くの珍しい武器をもち風のように速いと述べている。十二日目には弟たちを討たれたのち、アルジュナとクリシュナを相手にマーヤー(幻術)を用いて戦った。
十八日目、最後の総大将シャリヤが倒れたあとも自軍を叱咤して戦い続けたが、息子ウルーカをサハデーヴァに討たれ、味方が崩れ始める。逃げようとした彼にサハデーヴァが、クシャトリヤの務めを守って戦えと呼ばわった。向き直って槍を執った彼は、腕と首を斬られて果てる。骰子賭博の日にサハデーヴァが立てた誓いが、ここで果たされた。
図像と象徴
固有の像容は伝わっていない。彼を示す標はもっぱら骰子である。伝承では、その骰子は父スバラの骨から作られており、彼の意のままに目が出たとも語られる。この説明は原典の本文には見えず、後代の語りに属する。
系譜と関係
父はガンダーラ王スバラ、姉妹はガーンダーリー。したがってドゥルヨーダナ以下カウラヴァ百王子の母方の伯父にあたる。息子にウルーカがあり、開戦前にパーンダヴァへの罵詈を伝える使者を務めた。ドゥルヨーダナ、カルナと結んで一団をなす。
文化的足跡
戦後、息子たちを失って嘆くガーンダーリーは、兄弟の死をも悼みつつ、天界でもまた争いの種を蒔いてはいないかと案じたと語られる。近現代のインドでは、彼の動機に別の説明を与える再話が広く流布している。ガンダーラ王家がクル族に辱められた恨みを晴らすため、一族の滅亡を最初から企てていたとするものである。原典にこの筋立ては見えないが、単なる悪役に理由を与えようとする語りとして、映像作品や小説で繰り返し用いられている。