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除蓋障菩薩
PLATE — सर्वनीवरणविष्कम्भिन्
DHARMA · 仏教の尊格
सर्वनीवरणविष्कम्भिन्

除蓋障菩薩

除一切蓋障菩薩 · 不思議恵菩薩 · 離悩金剛

Himalayan Art Resources(CC0) CC0

八大菩薩の一尊。悟りをさまたげる一切の蓋障を取り除くことを本誓とする。個別の信仰の対象にはならず、瞑想の障りを払う尊格として、また胎蔵曼荼羅の一院の主尊として知られる。

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解説

概要

除蓋障菩薩(सर्वनीवरणविष्कम्भिन् / Sarvanīvaraṇaviṣkambhin)は、大乗仏教の菩薩の一尊である。梵名は「一切(sarva)の蓋障(nīvaraṇa)を遮り止める者(viṣkambhin)」を意味し、除一切蓋障菩薩とも訳された。文殊菩薩普賢菩薩観音菩薩勢至菩薩虚空蔵菩薩地蔵菩薩弥勒菩薩とともに八大菩薩の一尊に数えられる。ただし他の七尊が広い信仰を集めたのに対し、この菩薩が個別の崇敬の対象になることはほとんどなく、もっぱら修行者の側から、瞑想をさまたげるものを払う尊格として名を呼ばれてきた。八大菩薩のうち、最も知られていない一尊である。

神話・物語

物語を語る尊格ではない。名そのものが働きを示しており、経典における役割も、問いを立てる者としての位置に集中している。『宝雲経』および『如来不思議境界経』では、釈迦に問いを発する主たる対話者としてこの菩薩が立てられる。『大日経』にも名が見え、一切の障りを除く真言が説かれる。

名の中核をなす「蓋(nīvaraṇa)」は、もともと上座部の文献で頻用された語である。そこでは禅定を妨げる五つの心のはたらき——貪欲、瞋恚、惛沈睡眠、掉挙悪作、疑——を五蓋と呼ぶ。日本の密教はこれを承け、「蓋」に貪欲・瞋恚・昏眠・掉悔・疑の五蓋を、「障」に煩悩障・業障・生障・法障・所知障の五障を配して説いた。この菩薩の名は、修行の途上に立ちはだかるものの一覧そのものを負っている。

図像と象徴

日本で最もよく目にする姿は、胎蔵曼荼羅のなかにある。この曼荼羅には除蓋障院という一区画が設けられており、金剛手院の右(南)に位置して九尊で構成される。その中央に住するのが除蓋障菩薩であり、密号を離悩金剛という。曼荼羅の構成としては、文殊院において般若の智慧の実相が悟られ、その果としてこの院で衆生の蓋障が除かれるという配置になっている。院の並びそのものが修行の順序を語る仕掛けである。

図像は、右手を無畏の印に結び、左手に如意宝珠を載せた蓮華を執る姿が知られる。蓮華のみを持つ形、宝珠を伴う形など作例には幅があるが、いずれも忿怒の相はとらない。障りを断つ尊格でありながら武器を振るう姿で表されないところに、この菩薩の性格がよく出ている。

除蓋障院の九尊には日光菩薩なども含まれ、地蔵院の諸尊とのあいだで尊名の配当に異同が指摘されている。作例を読むときは、院の位置と中央尊との関係から確かめるのが確実である。

インド・チベット系の図像では、五智如来のうち不空成就如来の系統に配されることが多く、まれに阿閦如来の系統ともされる。ヴァジュラパーニの一形態とみなす説もあるが、これは金剛手を化身とする勢至菩薩との取り違えから生じたものと考えられている。

敦煌に近い楡林窟第25窟には、8世紀後半の八大菩薩曼荼羅の壁画があり、この菩薩を含む八尊が並んで描かれていた。壁画そのものは失われたが、1943年に撮影された写真によって図様が伝わっている。

系譜と関係

八大菩薩という枠組みは、経典によって顔ぶれが揺れる。除蓋障菩薩が加えられるのは比較的よく見る組み合わせだが、別の尊格が代わりに入る伝えもある。この菩薩が単独の信仰を得なかったことと、枠組みのなかでのみ名を保ちつづけたこととは、おそらく表裏の関係にある。

別称として不思議恵菩薩(アチントゥヤマティ、「不可思議な智慧を与えられた者」の意)が用いられる。衆生に世間の思議の及ばない智慧を与え、心の覆いを取り除くという含意で、除蓋障という名を別の側面から言い換えたものである。

文化的足跡

この菩薩を本尊とする寺院は、日本にはほとんど存在しない。信仰の場は曼荼羅の内部と、密教の修法のなかに限られてきた。一切の障りを除くという真言は、修法に先立って道場を清め、行をさまたげるものを退けるために唱えられる。

創作作品でこの尊名が扱われることも、八大菩薩のなかでは際立って少ない。名が働きの記述そのものであって、個性ある物語を持たなかったことが理由であろう。逆にいえば、八大菩薩という枠組みが何を並べようとしたのかを考えるうえで、この一尊は最もわかりやすい手がかりになる。智慧を担う者、慈悲を担う者、行を担う者、救済を担う者に並んで、「障りを除くこと」がひとつの徳として立てられているのである。

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領分・別名

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資料

Wikidata
Q1020712 — 骨格データの出典
Commons
Sarvanivāraṇaviṣkambhin — 図像カテゴリ