プラジャーパティ
プラジャーパティ · 生類の主 · 造物主
「生類の主」を意味する創造神の称号。ヴェーダでは自らを供犠として捧げ、その身体から世界が生じたと説かれる。プラーナではブラフマーの意より生まれた十人の創造神を指し、七聖仙と重なる。
解説
概要
プラジャーパティ(prajāpati、「造物主」「生類の主」)は、インド神話に登場する宇宙万物の創造神たちである。
広義では、プラーナ文献などに記載されているブラフマー神が生み出した「プラジャーパティ」と呼ばれる十人の創造神の呼び名である。十人説のほかに、七人説、八人説、十六人説などもある。
『ヴェーダ』にも記述があり、インドラ、サヴィトリ、ソーマ、ヒラニヤガルバなど創造神を指している。『ブラーフマナ』では、ブラフマー神を指す。
ヴェーダにおける展開
『リグ・ヴェーダ』第10巻の後期の讃歌において、プラジャーパティは「誰に我らは供物を捧げるべきか」(カスマイ・デーヴァーヤ)という問いとともに現れる。この問いを繰り返す讃歌の末尾で、答えとしてプラジャーパティの名が挙げられる。
『ブラーフマナ』文献では、プラジャーパティが最高の創造神となる。自らを供犠として捧げ、その身体から世界が生じたと説かれる。創造とは供犠であり、供犠とは自己の分割である——ヴェーダ祭式の理論の中核をなす観念である。
ウパニシャッドの時代には、プラジャーパティの位置はブラフマンに取って代わられ、プラーナの時代にはブラフマー神と同一視されるようになった。
十人のプラジャーパティ
『マヌ法典』などが挙げる十人は、マリーチ、アトリ、アンギラス、プラスティヤ、プラハ、クラトゥ、ヴァシシュタ、プラチェータス(ダクシャ)、ブリグ、ナーラダである。
これらはブラフマーの「意より生まれた子」(マーナサプトラ)であり、七聖仙(七聖仙)と重なる。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ブラフマーとプラジャーパティの像である(チェンナイ政府博物館蔵)。
創造神の名が複数の神に適用される称号であるという点が、この神格を規定する。固有名詞ではなく、創造の役割を担う者への呼称である。
関わる神格・伝承
ブラフマーと同一視される。十人のプラジャーパティはブラフマーの意より生まれた子。
文化的足跡
「プラジャーパティ」は、インドの創造神学の変遷を追う鍵となる名である。ヴェーダの供犠の神から、プラーナの祖先神へと位置を変えた。
なおヒンドゥー教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。