ポリュドーロス(カドモスの子)
ポリュドーロス · ポリュドロス · Polydoros
テーバイ建設者カドモスの唯一の息子。四人の姉のあとに生まれ、王位を継いだが早くに死んだ。ラーイオスの祖父にあたる。
解説
概要
ポリュドーロス(Πολύδωρος / Polydōros)は、テーバイの建設者カドモスとハルモニアーの子である。四人の姉——アウトノエー、イーノー、セメレー、アガウエー——のあとに生まれた末子であり、唯一の息子であった。
彼自身の物語はほとんど伝わらない。それでも、テーバイ王家の直系は彼を通ってのみ続く。姉たちが子を失い、あるいは我が子を手にかけていくなかで、王統を次代へ渡す役だけを担った人物である。
神話・物語
父カドモスがイリュリアへ去ったのち、王位を継いだ。ただし継承の順序は資料で分かれる。アポロドーロスは、カドモスが姉アガウエーの子ペンテウスに王位を譲り、ペンテウスがディオニューソスの信女たちに引き裂かれたのちに彼が継いだとする。エウリピデス『バッコスの信女』はペンテウスをカドモスの直後の王とし、彼に触れない。
妻はスパルトイの一人クトニオスの子ニュクテウスの娘ニュクテイスである。外から来た建設者の血と、土から生えた戦士の血が、この婚姻で結ばれた。生まれた子ラブダコスがまだ一歳のとき、彼は死んだ。
幼い王子の後見にはニュクテウス、次いでその弟リュコスが立った。リュコスがのちにアムピーオーンとゼートスの兄弟に討たれるまで、テーバイの実権はこの外戚の家にある。カドモスの直系が二代続けて幼くして王を残すという事情が、王権の空白を生み続けた。
図像と象徴
彼を描いた古代の作例は知られていない。祭祀も伝わらない。名を継ぐ役だけを与えられた人物であり、絵になる場面をひとつも持たない。本ページに主画像を置いていないのはこのためである。
系譜と関係
父カドモス、母ハルモニアー。姉にアウトノエー、イーノー、セメレー、アガウエー。妻ニュクテイス、子ラブダコス。孫がラーイオス、曾孫がオイディプースである。
姉セメレーの子がディオニューソスであるから、彼は神の叔父にあたる。神を生んだ家と、その神に滅ぼされる家が、同じ一代のうちに分かれている。
文化的足跡
彼の名を負う系統は「ラブダコスの裔(ラブダキダイ)」と呼ばれ、孫の名で総称された。子の名が家系の呼称となり、彼自身の名は残らなかった。テーバイ悲劇が呪われた家として語るのは、常にこの「ラブダコスの裔」である。