テオニム THEONYM · 世界神話アーカイブ 神格を検索
ペンテウス
PLATE — ΠΕΝΘΕΎΣ
HELLAS · ギリシア神話
ΠΕΝΘΕΎΣ

ペンテウス

ペンテウス · Pentheus

Casa dei Vettii, Pompeii PUBLIC DOMAIN

テーバイ王。ディオニューソスの神性を認めず、狂気に陥った母アガウエーと女たちの手で八つ裂きにされた。

01

解説

概要

ペンテウス(Πενθεύς / Pentheus)は、カドモスの娘アガウエースパルトイのエキーオーンの子で、祖父からテーバイの王位を継いだ人物である。ディオニューソスの神性を認めなかったために、母自身の手で引き裂かれて死んだ。

名は「悲しみ」を意味するペントスに通じる。エウリピデス『バッコスの信女』は、この名が彼の運命をあらかじめ告げているという趣旨の台詞を作中に置いており、名と結末の一致が意識されていたことがわかる。

神話・物語

スパルトイの血を引く粗暴な男で、神々に対して不敬であったと伝えられる。予言者テイレシアースの名声が高まったときも、ひとり彼だけがこれを認めなかった。テイレシアースは、新しい神がテーバイに来たとき、それを信じなければ八つ裂きにされて死ぬだろうと予言する。

やがてセメレーの子ディオニューソスがテーバイに現れた。母アガウエーとその姉妹アウトノエーイーノーは狂気に陥り、祭儀に加わってキタイローン山へ去る。老カドモスとテイレシアースは信仰を勧めたが、ペンテウスは新来の神を捕らえて家畜小屋に閉じ込めた。

以後、彼が見るものはすべて幻に変わる。牡牛を神と思い込んで縛ろうとし、セメレーの墓前に灯された火を王宮の火災と錯覚して消火に走り回り、中庭の幻影に何度も剣を打ち込む。ディオニューソスが祈ると地震が起きて王宮は崩れ落ちた。理性を誇る王が、認めない神の力によって理性そのものを奪われていく。

信女たちを討伐しようとした彼に、神は「その様子を見たくはないか」と持ちかける。祭を淫らな集まりだと思い込んでいた彼は誘いに乗り、女装してキタイローンへ向かった。このとき彼の目には太陽もテーバイの城壁も二つに見え、ディオニューソスは牡牛の姿に見えている。神に助けられて木に登り、女たちを覗き見たところで神は姿を消し、女たちをけしかけた。木は引き抜かれ、落ちた彼に真っ先に飛びかかったのは母であった。獅子を仕留めたと思い込んだアガウエーは、息子の首を杖に掲げてテーバイへ帰る。

コリントスの伝承では、彼が登った木がデルポイの神託によって探し出され、その木からアルテミスとディオニューソスの神像が作られて崇拝されたという。

図像と象徴

古代美術は、この死の場面を繰り返し描いた。スパラグモス——生きた者を素手で引き裂く行為——が視覚化しやすかったことに加え、悲劇の上演と結びついて需要があったとみられる。

本ページの主画像は、ポンペイのウェッティウス家の食堂北壁を飾るローマ期の壁画で、信女たちに引き裂かれる彼を描く。同じ家の別の壁にはイクシーオーンの車輪の場面があり、神を侮った者の末路という主題で対をなしている。アッティカの赤絵式杯やアプリアの壺にも同じ場面が残る。

なお、彼を主題とする図像では母アガウエーの顔が正面を向いて描かれることがある。古典期の陶画で正面顔はほとんど用いられず、狂気や異常な状態を示す記号として限定的に使われた技法である。

系譜と関係

父はスパルトイの一人エキーオーン、母はカドモスの娘アガウエー。したがって彼はテーバイの二つの起源——外から来た建設者と、土から生えた戦士——の双方の血を引く。

子はオクラソス、その子がメノイケウスであり、イオカステークレオーンはその子にあたる。テーバイ悲劇の後半に現れる人物たちは、いずれもこの家系から出ている。

母アガウエーは、我が子を殺したのちイリュリアへ逃れて王リュコテルセースの妃となり、のちに父カドモスのためにその王を殺したと伝えられる。

文化的足跡

エウリピデス『バッコスの信女』は、詩人の死後に上演された遺作であり、ギリシア悲劇のなかでも最も解釈の分かれる作品として論じられ続けてきた。信仰を拒む者への罰として読むか、神の残酷さを描いたものとして読むかで、作品の性格は正反対になる。

近代では、E・R・ドッズの注釈が集団的な熱狂と理性の関係を論じる古典的な研究となった。演劇では、リチャード・シェクナーの『ディオニュソス・イン・69』(1968年)のように、観客を巻き込む形式でこの作品を上演する試みが繰り返されている。

02

領分・別名

03

資料

Wikidata
Q391091 — 骨格データの出典
Commons
Pentheus — 図像カテゴリ