ラーイオス
ライオス · ラーイオス · Laios
テーバイ王でオイディプースの父。子に殺されるという神託を恐れて我が子を捨てたが、成長した子に三叉路で殺された。
解説
概要
ラーイオス(Λάϊος / Laios)は、テーバイ王ラブダコスの子で、オイディプースの父である。カドモスの血を引くテーバイ直系の王統に属する。
彼の物語は二つの部分からなる。若い日のクリューシッポス略取と、我が子を捨てて三叉路で殺されること。前者は後者の理由として、前5世紀以降の伝承が接続したものである。ホメーロスは略取にも呪いにも触れておらず、彼はただ「子に殺された王」として現れる。
神話・物語
父ラブダコスが早く死んだため、幼い彼はリュコスの後見下に置かれた。リュコスがアムピーオーンとゼートスの兄弟に討たれると、彼はペロポネーソスへ逃れ、ピーサ王ペロプスのもとに身を寄せる。
そこで彼はペロプスの庶子クリューシッポスに恋し、ネメアー祭へ向かう途中で戦車に乗せて連れ去った。少年はのちに死に、ペロプスは彼を呪う——子を持てば、その子に殺されるであろう、と。プラトン『法律』は、この行為をギリシアにおける男性間の性愛の起源として語る俗説に触れており、古代においてこの物語が制度の由来譚としても扱われていたことがわかる。
アムピーオーンとゼートスの死後、テーバイへ戻って王位に就き、メノイケウスの娘イオカステーを娶った。子を持てば殺されるという神託を受けた彼は妻を遠ざけるが、酔って交わり男児が生まれる。彼はその子の踵を留め金で刺し、キタイローンの山に捨てさせた。
年を経て、彼はデルポイへ向かう途上、ポーキスの三叉路で若者と行き合う。道を譲れという従者の言葉に応じない相手を打ったところ、逆に殺された。若者は捨てたはずの子であった。相手が名乗らず、彼も名乗らなかったため、二人は互いが誰かを知らないまま出会い、別れる。
殺害はテーバイに穢れをもたらし、疫病と不作の原因となる。子である新王が犯人を追い、自分に行き着く——ソポクレース『オイディプース王』の筋は、この未解決の殺人事件から始まる。
図像と象徴
彼を名指しできる古代の作例はごく少ない。三叉路の殺害を描く作例はほとんど知られず、古代美術がこの物語から選んだのはスピンクスとの対面であって、父殺しではなかった。
クリューシッポスの略取を描く南イタリアの壺絵には彼が現れるが、その代表例はクリューシッポスの項に掲げている。本ページに主画像を置いていないのはこのためである。
系譜と関係
父ラブダコス、祖父ポリュドーロス、曾祖父カドモス。妻イオカステー、子オイディプース。孫はエテオクレース、ポリュネイケース、アンティゴネー、イスメーネー。
妻の弟がクレオーンであり、彼の死後の摂政となる。カドモスの直系はオイディプースの子らの代で絶え、王権はスパルトイの血を引くクレオーンの家へ移る。
文化的足跡
「ラーイオスの罪」という表現は、子に及ぶ親の過失を指す言い回しとして用いられてきた。ただし、彼の罪を呪いの起点とする語り方が古い層に属さないことは、テーバイ伝説の成立を論じるうえで繰り返し指摘される。
精神分析がエディプス・コンプレックスを論じる際、殺される側の父については長く扱われなかった。二〇世紀後半以降、子を排除しようとする親の側の攻撃性を「ライオス・コンプレックス」と呼ぶ議論が現れている。