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ナブー
PLATE — 𒀭𒀝
SVMER · メソポタミア神話
𒀭𒀝

ナブー

ナブ · ネボ · ナブウ

Osama Shukir Muhammed Amin FRCP(Glasg) CC BY-SA 4.0

バビロニアの書記と知恵の神。マルドゥクの子とされ、ボルシッパのエジダ神殿に祀られた。尖筆と粘土板を標識とし、運命の書板に人の定めを記す神である。

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解説

概要

ナブー(𒀭𒀝 Nabû)は、書記と書字、知恵と学芸を司るメソポタミアの神である。名はセム語の語根 n-b-ʾ「告げる」に由来し、「告知する者」を意味すると解される。ヘブライ語のナービー(預言者)、アラビア語のナビーと同根である。

本拠はバビロンの姉妹都市ボルシッパのエジダ神殿。もとは西セム系の神で、前2千年紀のはじめ、アムル人の移動とともにメソポタミアへ入ったとみられる。前1千年紀に入ってマルドゥクの子と位置づけられると急速に地位を高め、新バビロニア時代には父と並ぶ帝国の主神格となった。ナブポラッサル、ネブカドネザル、ナボニドゥスといった王名がいずれもこの神の名を含む。

神話・物語

ナブーを主人公とするまとまった神話は伝わらない。この神について分かるのは、讃歌と奉献銘文、そして祭礼の次第からである。

当初ナブーはマルドゥクの書記官にして大臣とされ、のちに息子とされた。この昇格は、バビロニアの神々の再編と対応している。エンリルが主神の座をマルドゥクに譲ったとき、「父なる神の最も重要な息子」という位置——それまでエンリルの子ニヌルタが占めていた位置——が空き、そこにナブーが収まったと説明される。ニヌルタに結びついていた水星との関連や、月神シンとの結びつきをナブーが受け継いだのも、この経緯による。

アキートゥ祭では、ボルシッパのナブー像が船でバビロンへ運ばれ、父のもとに詣でた。この行列は新年祭の眼目のひとつであり、二つの都市の関係を毎年更新する儀礼でもあった。ナブーは運命の書板の保持者として、人の運命を書き記し、寿命を延ばしも縮めもするとされた。アッシリア語で書かれた「マルドゥクの試練」の文書では、罪に問われて捕らえられた父を求めてナブーがバビロンに現れる。バビロン征服後のアッシリアが、新年祭の筋書きをそのまま自国の神学に読み替えた例である。

図像と象徴

ナブーの標識は、粘土板の上に置かれた尖筆である。楔ひとつを図案化した単純な記号でも表され、ナボニドゥス王の笏の頭にはこの楔が据えられていた。とりわけ美しく書かれた粘土板そのものが、この神への奉献物とされた。

人の姿では、有角の冠を戴き、両手を前で組む古い祭司の所作をとって立つ。随獣は、本来は父マルドゥクのものであった蛇竜ムシュフシュである。

本項に掲げるのは、ニムルド(古代カルフ)のナブー神殿エジダから出土した前8世紀の巨像で、現在イラク博物館にある。同じ神殿からは、アッシリア王アダド・ニラリ3世と王妃サンムラマトのために奉献された同型の像が出土しており、うち一体は大英博物館に展示されている。台座の銘文は「後の世の王よ、ナブーを頼め、他の神を頼むな」と読者に呼びかける。

系譜と関係

父はマルドゥク、母はザルパニトゥ、祖父はエア。妻は女神タシュメートゥである。

書記の神としてのナブーは、シュメールの女神ニサバの職分を引き継いだ。両者は一時期併存し、ウガリットやエマルの写字生は自らを「ナブーとニサバの僕」と記している。

バビロニアの占星術では水星と結ばれた。ヘレニズム期には、神託を授ける神としてギリシアのアポローンと、知恵と伝令の神としてヘルメースおよびエジプトのトートと重ねられ、さらにローマ人はこれをメルクリウスと同一視した。水星をあらわす西洋語の名は、この連なりの末端にある。

文化的足跡

ナブーへの信仰は、楔形文字が読まれなくなる2世紀ごろまで続いた。書字そのものを司る神であったから、書字の消滅と歩みを共にしたことになる。ヘブライ語聖書ではネボの名でイザヤ書46章とエレミヤ書48章に現れ、バビロンの神々が担がれて運ばれる場面に置かれている。エジプトのエレファンティネやアスワンでは、セム系住民の祀る神々のひとつに数えられた。マンダ教の宇宙論では、水星の名が今もこの神の名に由来する。現代の創作では、アメリカン・コミックスや映画作品に神の名として引かれることがある。

02

領分・別名

INTERPRETATIO — 同一視・同源
ヘルメース ギリシア神話 同一視
ヘレニズム期、知恵と神々の伝令という性格からナブーはヘルメースと同一視された。
メルクリウス ローマ神話 同一視
ヘルメースとの同定を経てローマ人はナブーをメルクリウスと重ねた。バビロニア占星術でナブーが水星と結ばれていたことと呼応する。
トート エジプト神話 同一視
書字と学芸を司る神として、ヘレニズム期にエジプトのトートと重ねられた。
アポローン ギリシア神話 同一視
神託を授ける神としての側面から、ヘレニズム期にアポローンと同一視されることがあった。

親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承点線=異伝・別系統

𒀭𒀫𒌓
マルドゥク
ザルバニトゥ
𒀭𒀝
ナブー
メソポタミア神話
タシュメトゥム
配偶者
ザルバニトゥ
𒀭𒀝
ナブー
メソポタミア神話
タシュメトゥム
配偶者
収載データなし
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資料

Wikidata
Q392239 — 骨格データの出典
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