モーモス
モモス · クエレッラ · Momus
非難と皮肉を人格化したニュクスの子。神々の作品すべてに難癖をつけてオリュンポスを追放された。失われた叙事詩ではトロイア戦争を起こすことを建議したとされる。
解説
概要
モーモス(Μῶμος / Momos)は、非難とあら探しを擬人化した神である。ヘーシオドス『神統記』ではニュクスが夫なしに生んだ子の一柱とされる。何にでも欠点を見つける性質のために、ついにオリュンポスから追われたと語られる。
神話・物語
『神統記』(214行)は、ニュクスの子らのなかに、モーモスと「苦しみに満ちた」オイジュスを並べて挙げる。
失われた叙事詩『キュプリア』の筋を伝える古注によれば、人間が増えすぎて大地がその重さに苦しんだとき、ゼウスは雷や洪水で人を滅ぼそうとした。モーモスはこれを退け、テティスを人間に嫁がせ、ゼウス自身は美しい娘をもうけよと進言した。こうして生まれたアキレウスとヘレネーが、トロイア戦争を引き起こして多くの人を死なせることになる。
イソップ寓話では、ゼウスが人間を、ポセイドーンが牡牛を、アテーナーが家を作り、出来を競ってモーモスに判定させた。モーモスは、牡牛は目が角の下にないので突く先が見えない、人間は胸に窓がないので心の内が見えない、家は車輪がないので悪い隣人から逃げられない、とすべてに難癖をつけた。怒ったゼウスは彼をオリュンポスから追い出した。アプロディーテーには欠点を見つけられず、ただ履物の音がうるさいと言ったという話もある。
後2世紀のルーキアーノスは、モーモスを神々の世界の乱れを遠慮なく指摘する役として風刺対話に用いた。
図像と象徴
本サイトの主画像は、フランス、ナントのグラスラン劇場の天井画の一部で、19世紀の画家イポリット・ベルトーが描いたモーモスである。
古代の作例は知られない。近世以降の寓意画では、道化の杖や仮面を手にした姿で風刺の擬人像として描かれた。
系譜と関係
母はニュクス(ローマの著者は父をエレボスとする)。兄弟にオイジュス、ネメシス、エリスなど。キケロー『神々の本性について』(3.44)は、夜とエレボスの子の一つとしてクエレッラ(嘆き、不平)を挙げ、これがモーモスに相当するとみられている。
文化的足跡
ルネサンス期のアルベルティは、ラテン語の風刺小説『モムス』で、神々を批判して追放されたこの神を主人公にした。英語などで口うるさい批評家を「モーマス」と呼ぶ用法も生まれた。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。