マハーデーヴィー
マハーデーヴィー · アーディ・パラーシャクティ · マハーマーヤー
ヒンドゥー教における至高の女神。女神を中心とするシャークタ派において、ヴィシュヌ・シヴァ・ブラフマーを含むすべての神々はこの大女神の顕現とされる。男神が静止した意識であるのに対し、女神は動く力(シャクティ)であり、その力そのものが究極の実在である。
解説
概要
マハーデーヴィー(「偉大な女神」)は、ヒンドゥー教において至高の女神を指す名で、アーディ・パラーシャクティ(「原初の至高の力」)とも呼ばれる。女神を最高の存在とみるシャークタ派では、ヴィシュヌ、シヴァ、ブラフマーを含むすべての神々がこの大女神のあらわれであり、女神こそが究極の実在であるとされる。
なお本サイトの分類では、ヒンドゥーの体系に含めて扱う。
力こそが究極
ヴィシュヌ派やシヴァ派では、最高の存在は男神であり、女神はその配偶者、すなわち力(シャクティ)として位置づけられる。シャークタ派はこの関係を逆にとらえる。男神が静かな意識であるのに対し、女神は世界を動かす力であり、その力そのものが究極の実在だと考えるのである。
デーヴィー・マーハートミヤ
シャークタ派の根本聖典とされるのが、5〜6世紀頃に成立した『デーヴィー・マーハートミヤ』(「女神の偉大さ」)である。『マールカンデーヤ・プラーナ』の一部として伝わる。神々が阿修羅に敗れて天界を追われたとき、神々の怒りから放たれた光が一つに集まって女神が現れ、水牛の姿の阿修羅マヒシャースラを討ち果たした。男神たちが倒せなかった敵を、女神が倒したのである。この聖典は今日もナヴァラートリの祭で朗誦される。
三つの姿
大女神は、暗黒と破壊のマハーカーリー、富と維持のマハーラクシュミー、知と創造のマハーサラスヴァティーという三つの姿をとるとされる。シヴァ、ヴィシュヌ、ブラフマーの三神に、それぞれ女神の三つの姿が対応している。ヴァイシュノー・デーヴィーの聖地で祀られる三つの岩も、この三つの姿を表すとされる。
村の女神たちをまとめる
インドの村々には、それぞれ土地固有の女神が祀られている。シャークタの神学は、これらをすべてマハーデーヴィーのあらわれとみなし、数えきれない在地の女神たちを一つの体系のなかにまとめ上げた。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、女神を描いた細密画(メトロポリタン美術館蔵)である。
関わる神格・伝承
ドゥルガー、カーリー、ラクシュミー、サラスヴァティー、パールヴァティーは、いずれもそのあらわれとされる。
近代には、インドの国土そのものを母なる女神として表したバーラト・マーターが、マハーデーヴィーに重ねられた。
カルナータカのコッルールでは、至高の女神の一つの姿としてムーカーンビカーが祀られる。
文化的足跡
九夜の祭ナヴァラートリはインド全域で盛大に祝われ、女神の九つの姿(ナヴァドゥルガー)が一夜ずつ祀られる。
なおヒンドゥー教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。