ラクシュミー
シュリー · マハーラクシュミー · シュリーデーヴィー
富・幸運・繁栄・美を司る女神で、維持神ヴィシュヌの妃。シュリーとも呼ばれ、乳海攪拌の海から蓮を手に現れた。二頭の象が水を注ぐガジャ・ラクシュミーの図像は前3世紀に遡る。ディーワーリーの主役で、仏教では吉祥天となった。
解説
概要
ラクシュミー(लक्ष्मी / Lakṣmī)は、富・幸運・繁栄・美を司る女神である。「吉祥」を意味するシュリー(Śrī)の名でも呼ばれ、維持神ヴィシュヌの妃とされる。ヒンドゥー教で最も広く日々に祀られる女神の一柱であり、仏教やジャイナ教にも取り入れられた。
神話・物語
人格をもつ女神に捧げられた最も古い讃歌の一つが、『リグ・ヴェーダ』第5巻の補遺(キラ)に収められた『シュリー・スークタ』である。15の詩節からなり、女神を黄金の肌をもち、戦車に乗り、象・馬・蓮と結びつく者として讃える。不運と貧しさを体現する、対となるアラクシュミーを追い払うよう、女神に願う詩でもある。
その出自を語る最も名高い物語が乳海攪拌である。神々と阿修羅が不死の霊薬アムリタを求め、マンダラ山を攪拌棒、蛇ヴァースキを綱として乳の海をかき混ぜたとき、ヴィシュヌは亀クールマとなって山を支えた。その攪拌のなかから、ラクシュミーが蓮を手にして現れた。『ヴィシュヌ・プラーナ』によれば、彼女は神々の側を選び、なかでもヴィシュヌを伴侶とした。ヴィシュヌのアヴァターラ(化身)が地上に降るたび、彼女も伴侶として生まれる。ラーマにはシーターとして、クリシュナにはルクミニーとして生まれた。
『ガルダ・プラーナ』『リンガ・プラーナ』『パドマ・プラーナ』は、聖仙ブリグとその妻キヤーティの娘として生まれ、バールガヴィーと名づけられたとも伝える。
図像と象徴
ラクシュミーは、蓮の座に立ち、あるいは坐す黄金色の女神として描かれる。多くは四本の腕で蓮華を執り、一方の手からは金貨がこぼれ落ちる。とりわけ名高いのが、二頭の象が鼻をもたげて水を注ぎかける「ガジャ・ラクシュミー」の図像である。前3〜前2世紀のテラコッタの小板に早い例があり、シュンガ朝の王の貨幣や、スキタイ系のアゼス2世の貨幣にも刻まれた。仏教の最古級の仏塔や石窟寺院にも、ラクシュミーの姿が現れる。乗物は梟とされ、象や獅子とも結びつく。
本サイトが掲げるのは、ラージャ・ラヴィ・ヴァルマが描いたラクシュミーの油彩である。
系譜と関係
ヴィシュヌの妃である。シャークタ派のウパニシャッドは、ラクシュミー、サラスヴァティー、パールヴァティーの三女神トリデーヴィーに捧げられている。富の八つの相はアシュタ・ラクシュミーとして、穀物・勇気・子孫・学識・勝利などの豊かさを分かち司る。
仏教では、中国で功徳天・吉祥天女と呼ばれ、毘沙門天の妹とされる。日本の吉祥天はこれにあたる。チベット仏教ではゲルク派で重んじられ、その忿怒の姿がパルデン・ラモとされる。ジャイナ教でも重要な女神で、カジュラーホーのパールシュヴァナータ寺院にはヴィシュヌとともに刻まれている。

文化的足跡
ラクシュミーは光の祭りディーワーリーの主役である。その夜のラクシュミー・プージャーでは、家々を灯火で飾り、除障の神ガネーシャとともに女神を迎える。収穫の祭であるシャラド・プールニマー(コージャーガリー・プールニマー)にも祀られる。金曜日は女神の日とされ、この日にヴァイバヴ・ラクシュミーの誓戒が行われる。
なおヒンドゥー教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。