クリタヴァルマン
フリディカの子 · アンダカ系ヤーダヴァ · ナーラーヤナ軍の将
クリシュナと同族でありながらカウラヴァ側に立ったヤーダヴァの武将。夜襲への加担が、のちの一族滅亡の引き金となっていく。
解説
概要
クリタヴァルマン(Kṛtavarmā / कृतवर्मा)は『マハーバーラタ』に登場するヤーダヴァ族の武将である。ヤドゥ族アンダカ系のフリディカの子。クリシュナと同族でありながらクルクシェートラの戦いではカウラヴァ側に立ち、最終夜にはアシュヴァッターマンの夜襲に加担した。戦後、その行為をサートヤキに責められたことが、ヤーダヴァ族の同士討ちの引き金となる。
神話・物語
彼が最初に名を残すのは、シャマンタカ宝珠の事件である。ナーラーヤナ軍(ゴーパ軍)の将であった彼は、友アクルーラとともにシャタダンヴァンを唆し、サトラージトを殺して宝珠を奪わせたとされる。シャタダンヴァンはクリシュナに討たれたが、宝珠はすでにアクルーラとクリタヴァルマンに預けられていた。のちに宝珠はアクルーラの手に残ることで決着する。
クルクシェートラの戦いでは、ドゥルヨーダナの求めに応じて一アクシャウヒニーの兵とともにカウラヴァ側についた。マハーラティに数えられ、初日にサートヤキと一騎討ちを演じ、ビーシュマの敷いた鶴形の陣の先頭に置かれた。ビーマに敗れ、サートヤキに傷つけられ、アルジュナとの戦いでは気を失っている。アビマニユを襲ってその馬を討ったのも彼である。ドローナの死後は戦場を退いた。
そして最終夜、彼はクリパとともにアシュヴァッターマンの夜襲に加わり、眠るパーンダヴァ陣営に火を放ち、逃れてくる者を陣の出口で討った。戦後はドリタラーシュトラにドゥルヨーダナの死を報せ、故国へ帰る。ユディシュティラの馬祀祭にも姿を見せた。
図像と象徴
固有の像容は伝わっておらず、独立した礼拝像の伝統もない。象徴となるのは、陣の出口という位置である。攻める側でも守る側でもなく、逃げる者を待ち構える場所に立ち続けた人物として記憶されている。
系譜と関係
父はフリディカ、ヤドゥ族アンダカ系に属する。クリシュナ、バララーマとは同族でありながら敵陣に立った。同じヤーダヴァのサートヤキとは、戦中も戦後も対立し続ける。
文化的足跡
第十六巻マウサラ・パルヴァが伝える最期は、ヤーダヴァ族の滅亡そのものの発端となる。プラバーサでの酒宴の席で、酔ったサートヤキが、眠る者を殺した行為は決して赦されぬと彼のクシャトリヤとしての生まれを嘲った。クリタヴァルマンは、武器を捨てたブーリシュラヴァスを討ったサートヤキの振る舞いを挙げて反論する。サートヤキはさらにシャマンタカ宝珠の件を持ち出し、そのまま彼の首を刎ねた。これを機にボージャ族とアンダカ族が争い、ヤーダヴァ族は互いに討ち合って滅びる。
戦場で果たされなかった応報が、酒宴の場で言葉の応酬から爆発するという構図は、叙事詩の結末を締めくくる主題の一つである。ガーンダーリーがクリシュナにかけた呪い——その一族もまた同族争いによって滅びるであろう——は、この一夜をもって成就した。