ルクミニー
ヴァイダルビー · ラクシュミーの化身 · ヴィッタラの妃
クリシュナの第一妃でドヴァーラカーの王妃。兄の定めた婚儀を拒み、自ら手紙を送って相手を選んだと語られている。
解説
概要
ルクミニー(Rukmiṇī / रुक्मिणी)は、クリシュナの第一妃であり、ドヴァーラカーの王妃である。ヴィダルバ王ビーシュマカの娘。ラクシュミーの化身とされ、兄の定めた婚儀を拒んでクリシュナに手紙を送り、自ら相手を選んだことで知られる。息子プラデュムナは愛神カーマの転生とされる。
神話・物語
『バーガヴァタ・プラーナ』第十巻が伝える。彼女はクリシュナの名声を聞いて心を寄せていたが、兄ルクミンはジャラーサンダと結んでおり、妹をチェーディ王シシュパーラに嫁がせようとしていた。婚礼の日が定まったとき、彼女はバラモンを使者として一通の手紙を送る。自らの思いを述べ、婚礼の前日に村はずれの女神アンビカーの社へ詣でる習わしがあるから、そこで攫ってほしいと請うたものである。
クリシュナは戦車を駆って現れ、参詣を終えた彼女を乗せて去った。追った兄ルクミンは敗れ、討たれようとしたところを妹の懇願によって助けられる。ただし髪と髭を剃り落とされ、その恥辱から国へ帰らず、新たな都を築いて生涯そこに留まったと語られる。
妃となってのちの挿話も多い。天界から得た唯一のパーリジャータの花をクリシュナが第二妃サティヤバーマーに与えたとき、彼女はこれを恨まなかった。またサティヤバーマーが夫を黄金で量って自らのものとしようとしたとき、いかなる財を積んでも釣り合わなかった秤が、彼女の捧げた一枚のトゥラシーの葉によって傾いたと伝えられる。名高い挿話だが、いずれも『バーガヴァタ・プラーナ』の本文ではなく後代の付加である。
図像と象徴
クリシュナの傍らに立つ妃として描かれる。マハーラーシュトラのパンダルプルでは、ヴィッタラ(クリシュナの地方形)とルクミニーが並んで祀られ、ヴァールカリー派の信仰の中心をなす。南インドの寺院でも、サティヤバーマーとともに主神の両脇に配される作例が多い。象徴となるのは一通の手紙であり、婚儀を定める側ではなく選ぶ側に立った女性という位置を示す。
系譜と関係
父はヴィダルバ王ビーシュマカ、兄はルクミン。夫はクリシュナ、子はプラデュムナら十人と娘チャールマティー。ラクシュミーの化身とされる点で、ヴィシュヌの配偶神としての位置づけを引き継ぐ。ラーダーとは異なり正式の妃であり、両者の関係は伝統によって扱いが分かれる。北インドのバクティではラーダーが至上の位置を占めるのに対し、南インドとマハーラーシュトラでは彼女が主となる。
文化的足跡
パンダルプルのヴィッタラ・ルクミニー寺院は、マハーラーシュトラのヴァールカリー派にとって最大の聖地であり、年に二度の徒歩巡礼(ワーリー)には数十万の人が集まる。彼女への手紙の一段は、ルクミニー・ハラナ(ルクミニーの略奪)として演劇と絵画の主題となってきた。
近現代の再話では、自ら相手を選び、そのために行動した女性として取り上げられることが多い。婿選びの場から連れ去られたアンバーと対比され、同じ略奪婚でありながら本人の意思が起点にあるという違いが論じられる。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。