ルクミン
ルクミー · Rukmin · Rukmi
ヴィダルバ国王子で妹ルクミニーの兄。クリシュナに妹を略奪され一騎打ちを挑んだが敗れ、命は助かったものの髪と髭を剃られた。大戦では両陣営から加入を断られた。
解説
概要
ルクミン(梵 रुक्मी Rukmin)は、インド神話の人物である。ヴィダルバ国王ビーシュマカの子で、ルクマラタ、ルクマバーフ、ルクマケーシャ、ルクママーリー、そして妹ルクミニーと兄弟にあたる。
『マハーバーラタ』『ハリヴァンシャ』『バーガヴァタ・プラーナ』において、ボージャカタの王であり、妹の夫クリシュナの敵対者として語られる。
神話・物語
ガンダマーダナ山に住むキンプルシャ族の王ドルマに師事し、弓のヴェーダの四部門すべてを習得した。神々の三種の弓の一つ、インドラ神のヴィジャヤ弓を得ている。残る二つ、アグニ神のガーンディーヴァ弓はアルジュナが、ヴィシュヌ神のシャールンガ弓はクリシュナが持っていた。
ルクミニーはクリシュナとの結婚を望んでいたが、クリシュナを嫌うルクミンは妹をチェーディ国王シシュパーラと強引に婚約させた。しかし婚礼の日、クリシュナはルクミニーを略奪して逃走する。
ルクミンは軍を率いて追い、一騎打ちを挑んだ。三本の矢を射て挑発したが、クリシュナは六本の矢でその弓を破壊し、八本で戦車の四頭の馬を、二本で御者を射殺し、三本で軍旗を切り裂いた。組み伏せられたルクミンは殺されようとしたが、妹の嘆願によって命を助けられる。ただし辱めとして髪と髭を剃り落とされた。
この屈辱のためルクミンは故国へ帰らず、ボージャカタの地に新しい都を築いたという。
のちクルクシェートラの戦いに際して、彼はパーンダヴァ側に加わろうとしたが、その傲慢な物言いのために断られ、次いでカウラヴァ側にも断られた。いずれの側にも属さないまま戦を過ごすことになる。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
殺されずに辱められるという結末が、この人物を規定する。妹の嘆願によって命は助かるが、髪と髭を剃られる。クシャトリヤにとってこれは死より重い恥辱であり、そのために故郷へ帰れなくなる。
大戦において両陣営から拒まれるという顛末も特異である。『マハーバーラタ』の登場人物の大半がいずれかの側に属するなか、この人物だけが排除される。
関わる神格・伝承
父はビーシュマカ、妹はルクミニー、娘はルクマヴァティー。ルクマヴァティーはクリシュナの子プラデュムナに嫁いだ。
つまり、敵対しながらも娘は相手の子に嫁ぐ。婚姻によって和解が形式的に成立しながら、当人の恨みは解けないという構成である。
文化的足跡
日本語圏では、ルクミニー略奪譚の敵役として言及される程度である。
しかし三種の神弓の一つを持つ弓の達人でありながら、クリシュナに一方的に敗れ、以後の物語から排除されるという扱いは、この叙事詩における敵役の配置を示している。強さは、クリシュナに対して意味を持たない。